借金まみれの社員を解雇したい……法的に可能なの?

ある日、会社へ社員宛に業務とは関係のない電話が。電話をかけてきたのは貸金業者で、借金の取りたての電話だったようです。後日その社員に詳しく話を聞いてみると、いわゆる“ヤミ金”や“サラ金”数社から、数百万円にも上る借金があるとのことでした。

いくらプライベートな問題とはいえ、自社の社員が多額の借金を抱えているという事実は、世間的に見てもあまりよく思えるものではないでしょう。「何か大きな問題になる前に辞めさせたい……」そのように考える経営者の方もいらっしゃるかもしれません。借金を抱えていることを理由に社員を解雇することは、法律上可能なのでしょうか?

■社員を解雇するための条件とは

解雇とは、会社(使用者)が社員(労働者)との労働契約を一方的に打ち切ることを指します。解雇は雇用する側である会社が持つ権利ですが、その権利を行使するには、厳しい制限が設けられています。

労働契約においては使用者と労働者の立場は対等であることが原則ですが、雇用する側の使用者と雇用される側の労働者とでは、どうしても使用者のほうが優位に立ってしまいがちです。そこで、労働基準法をはじめとしたさまざまな労働に関する法律では、労働者を保護し、その立場を守っています。

解雇に関して厳しい制限があるのも、労働者が生活の基盤となる職を突然に失うことで、著しく不利益を被る事態を避けるためです。つまり、会社都合で一方的に社員を辞めさせることは法律上認められておらず、解雇には非常に高いハードルがあるのです。

会社が社員を解雇するには、以下2つの条件をどちらも満たす必要があります。

1.該当者に対して、解雇される客観的かつ合理的な理由があること

2.解雇という処分が社会通念に照らし合わせて妥当だと判断できること

これらの条件を満たさず社員を解雇してしまった場合、解雇そのものが無効となります。また、不当に解雇したことが理由でその社員が不利益を被った場合は、慰謝料を請求される可能性もあります。

■借金の有無は解雇事由に該当する?

では、「借金を抱えていること」が上記2つの解雇の条件に当てはまるかといえば、どちらにも当てはまらないといえるでしょう。

まず、借金の理由が何であれ、社員が貸金業者からお金を借りていることは非常にプライベートな問題であり、仕事上で業務を行うこととは何の関係もありません。「会社の信用にかかわる」「自己管理もできない人間はうちでは雇えない」などというのはあくまでも会社側の主観にすぎず、実害がない限り解雇の理由として問題にすることはできないのです。

また、たとえば、借金を抱えている社員がいることで「借金取りたての電話応対でほかの社員の業務が滞っている」「給料差し押さえなどの事務手続きが増えて会社としても迷惑している」といったような影響が出ているとします。この場合、たしかに業務に差し障りがありますが、解雇に値するほどの実害とはいえないでしょう。

つまり、「借金返済のために会社のお金を横領した」といった法律に違反する行為でもない限り、借金を抱えている社員を解雇することは違法と考えておくべきだといえます。

■執拗な退職推奨は違法とみなされることも

借金を抱えていることを理由に社員を解雇することは難しいですが、社員とよく話し合いきちんと合意を得たうえで、自主的に辞めてもらう(退職推奨)ことは可能です。もちろん、あくまでも社員の合意を得ることが前提であり、辞める意思がないにもかかわらず退職を強要することはできません。

執拗に退職を迫った場合、刑法上の強要罪に当たる可能性もあります。また、違法であるかそうでないかにかかわらず、社員の心情に十分配慮して話し合うことを心がけてください。社員に退職を相談する前に、配置転換や部署移動、業務の変更などで対応できないかを検討することも重要です。

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