不当な人事異動を拒否したい!具体的な事例を解説

不当な人事異動は拒否できる?

人事異動は、主に以下の4つの種類に分かれます。

転勤……勤務場所の変更

異動(配置転換)……職務や業務内容の変更

在籍出向……勤務先企業の変更(元の会社に在籍したまま)

転籍出向……勤務先企業の変更(元の会社に在籍しない)

上記のうち、転勤・異動・在籍出向の命令に関しては、就業規則や雇用契約書に記載の内容に従い、基本的には従わなければならないとするのが一般的です。特に、転勤・異動に関しては、それらの人事異動が会社の慣例となっていれば、たとえ就業規則や雇用契約書に記載がなくても、広い範囲で会社の命令に従わなければなりません。

一方で、転籍出向の場合は、出向前の会社との労働契約が終了し、出向先の会社と新たに労働契約を結ぶことになります。労働条件そのものが大きく変わり従業員が多大な不利益を被る可能性が高いため、従業員1人1人の同意がなければ、会社は転籍出向を強制できません。つまり、転籍出向の場合は、従業員が自分の意思に従って拒否することが可能というわけです(ただし、グループ会社間への出向など形式的なものを除きます)。

また、上記のいずれの人事異動も、会社の権利濫用と判断される場合は、従業員は会社からの命令を正当に拒否することができます。

“権利濫用”の判断基準とは?

人事異動が不当なものかどうか、つまり、会社の権利濫用であるかどうかを判断する基準は、主に以下の3つです。

1.業務上の必要性

社内配置の適正化、業務効率化・円滑化、従業員の能力向上・スキルアップなど、その人事異動に一定の合理性が認められる場合は、権利の濫用にはあたりません。

2.目的(動機)の妥当性

人事異動の目的があくまでも会社にとって必要なものであること、また、その動機が正しいものであることが必要です。たとえば、人員削減のための退職推奨が目的であったり、気に入らない従業員への嫌がらせが動機であったりする場合、その人事異動は明らかに会社側の権利濫用と判断されるでしょう。

3.従業員に対する不利益の程度

人事異動によって従業員が必要以上の不利益を被る場合、その人事異動は権利濫用と判断されます。ただし、裁判例では、給与やキャリアなどに関わる不利益は比較的従業員の有利に認められるものの、私生活上の不利益はあまり考慮されていません。

たとえば、一個人からしてみれば生活環境が大きく変わってしまう転勤も、裁判例では“甘受すべき程度の不利益”であるとして、従業員が拒否することを認めていません。

人事異動を拒否できる具体的な事例

上記を踏まえたうえで、人事異動を正当に拒否できる事例を挙げてみましょう。

ケース1:専門職で入社した

会社側が職種限定で応募し、従業員が専門職として入社した場合、その従業員の配置転換や異動は、会社の独断では行えません。職種限定で入社したにもかかわらず人事異動により職種の変更を強いることは、大幅な労働条件の変更にあたるため、会社は本人の同意を得なければなりません。

ケース2.人事異動により子の養育や家族の介護に影響がある

育児・介護休業法では、従業員の子どもの養育や家族の介護に関して、会社側に一定の配慮をする義務を課しています。そのため、生まれたばかりの子どもがいる、子どもが重篤な病気を抱えている、親の介護のために付き添いが必要である、といった場合は、転勤などの人事異動を拒否できる可能性があります。

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