賢くスマートに!不公平な遺産分割を回避するための相続の基礎知識

「父が亡くなり49日が過ぎた後、長男から不公平な遺産相続の提案が……。遺言書もない場合、全て従わないといけないの?」

故人の遺言がないばかりに、本来ならば家族であるにもかかわらず、遺産相続で骨肉の争いとなるケースは少なくありません。

今回は不公平な遺産分割を回避するために、相続で必ず知っておくべき基礎知識をご紹介します。

■相続人の優先順位、割合は法律で決まっている!

民法には、亡くなった方の財産を相続できる人と、その優先順位、相続できる割合が詳細に定められています。

昔の日本では、家父長制により長男が家督を継ぐという慣例があり、旧民法も長男が全てを相続することとなっていました。しかし、戦後に制定された現在の民法は、長男の単独相続を廃止し、公平の見地、また残された遺族の生活の保障という観点から、具体的な相続の方法を定めています。

【民法の規定】相続の順位と割合

民法では、常に配偶者は相続人となります。また、血族の中にも相続権を持つ人もいます。その優先順位と割合は、以下のようになります。

第1順位:直系卑属(子)1/2の割合 ・ 配偶者1/2の割合 

※子が既に死亡している場合は子の直系卑属である孫などが代わりに相続します。

第2順位:直系尊属(父母や祖父母など)1/3の割合 ・ 配偶者2/3の割合

第3順位:傍系の血族(兄弟姉妹や甥・姪など)1/4の割合 ・配偶者3/4の割合

なお、第1順位の相続が行われれば、第2順位以下の相続はありません。

【事例】具体的な遺産分割の金額

具体的な事例に当てはめて、実際の相続する金額をみていくと分かりやすいでしょう。

例)被相続人(遺産2000万円)に妻と2人の子ども(A、B)がいる場合

相続財産は「2000万円」です。

法定相続の第1順位に該当します。

妻…1/2であるため 2000万円×1/2=1000万円

子ども(AとBの2人分)…1/2であるため 2000万円×1/2=1000万円

A…1000万円を2人で分けるので、1000万円×1/2=500万円

B…1000万円を2人で分けるので、1000万円×1/2=500万円

 

よって、妻は1000万円、子どもAは500万円、こどもBも500万円の金額を相続します。

今回の事例の場合、長男も本人も、亡くなった父親からみれば同じ「子」です。遺言がない以上、相続の割合は等しく、どちらかが多いということはありません。

ですから、不公平な遺産分割に従う必要はありません。



■不公平な遺産分割の提案に対してできること

では、不公平な遺産分割を提案した相続人に対して何ができるのでしょうか。

まずは相手にしっかりと「従わない」と伝えること、そして法律で定められた割合での相続を希望すると主張し、話し合うことです。まとまらない場合は、家庭裁判所の制度を利用します。一つずつ詳しく見ていきましょう。

【方法1】話し合い(遺産分割協議)

相続の問題の解決に向けて、まずは相続人全員で話し合うことです。

今回の事例であれば、不公平な遺産分割を申し出ている長男に対して、法律で決められた相続の割合で遺産分割をしたい旨を伝えます。

金銭的なことなので、言い出しにくい部分もあるでしょう。しかし、ただ単に「お金が欲しいからごねている」のではありません。残された遺族の方が安心して暮らせるよう、また公平の見地から、法律で相続の割合は決められているのです。自分にある権利を主張しているだけであり、遠慮せずに相手に伝えましょう。

地方や田舎の方では、昔からのしきたりで長男が全てを引き継ぐというケースもあるようです。周りからも不公平な提案で押し切られる可能性が高いなど、話し合いが不安な場合は、弁護士などの専門家に相談をすることをおススメします。話し合いに同席してもらうことも可能です。

なお、この遺産分割に関しては、いつまでに行わなければならないという期限はありません。ただ、相続財産をそのままにしておくと、新たなトラブルが起こる可能性もあり、早めに財産を分配して、確定させた方がいいでしょう。



【方法2】家庭裁判所の調停

話し合いをしても、うまくまとまらない場合は、家庭裁判所の「遺産分割の調停又は審判の手続」を利用することも一つです。

「調停」とは,中立の立場である調停委員が、話し合いを進めて、お互いが合意することで紛争の解決を図る手続です。

当事者双方から事情を聴き、場合によっては資料等の提出を促し、遺産についての鑑定をすることもあります。全部の事情を把握して、各相続人の希望を勘案しながら解決案を提示したり、助言を行いながら、合意を目指します。

解決案に対して合意に至らなかった場合は、自動的に審判手続が開始され、裁判官が、一切の事情を考慮して、審判をすることになります。

なお、調停手続を利用するには、「遺産分割調停事件」としての申し立てが必要です。他の相続人全員を相手方として申し立てることができます。



これまで相続につき説明してきましたが、「話し合い(遺産分割協議)」、「調停」のどちらにせよ、法律の知識が必要となり、時には交渉術も使わなければなりません。少しでも不安があれば、弁護士などの専門家に、速やかに相談をすることをおススメします。

関連記事