相続トラブルを防ぐ!認知症になる前にしておくべき法的手続きとは?

「遺産を予め分けておきたいのに、認知症になったからどうしようもない…」

認知症患者となれば時すでに遅し。相続対策ができず、様々な法律行為にも制限がかかります。しかし、認知症になる前であれば、色々と出来ることはあります。のちの相続のトラブルを回避するためにも、認知症になる前にしておくべき法的手続きについてご紹介します。

■認知症になれば何ができないの?

認知症とは脳の細胞が死んだり、働きが低下したために、精神機能が慢性的に減退・消失し、日常生活に支障をきたす状態のことをいいます。

通常の人であれば、自分が行った行動の法的な結果や意味を認識し、それに基づいて判断することができます。この能力を「意思能力」といいますが、認知症の状態であれば、意思能力がないと判断されることが多く、その場合、行った法律行為は無効となります。

つまり、相続の対策として、子どもや孫に高額のお金をあげる「生前贈与」や、遺産の分け方について言い残す「遺言」などをしても、無効になる可能性が高く、本人の意思が反映できない状態となるのです。

なお、このような状態になった場合に、民法には「法定後見制度」という仕組みがあります。家庭裁判所から選任された法定後見人が、介護のヘルパーの方の手配や入院の手続きなど、認知症の方に代わって契約をしたり、時には認知症の方が行った契約を取り消したりすることができるのです。ただ、全て認知症患者本人のために行うものであり、財産を管理し維持することが目的となります。ですから、生前贈与など相続のために行う法律行為は、相続人のための行為と解され、基本的にできません。

それでは、認知症になる前に、相続についての手続きなど、できることはないのでしょうか。以下、順に説明していきます。

■遺言書の作成

認知症になる前にできることとして、まず「遺言書」の作成が挙げられます。

「遺言書」とは、自分の死後、残した財産の分け方や処分方法などを言い残しておくものです。どうしても、自分が死ぬことを仮定して行うものですから、元気なうちはまだ早いと思われる方や、縁起でもないという考えの方もいます。

しかし、遺言をしたくてもできない状態となれば、自分の財産について考えがあっても、その気持ちを反映することは難しくなります。民法では遺言は15歳以上からできると定められています。のちの相続に関するトラブルを避けるためにも、気持ちの余裕のあるうちに、作成することをお勧めします。また、何回でも作り直すことができるので、毎年の誕生日など、定期的に作成の機会を作ることも一つです。

なお、遺言書は、一定の書式に則って作成する必要があります。専門的な知識が必要となるため、不安な方は、弁護士などの専門家に相談するのをお勧めします。

■任意後見制度

「法定後見制度」は判断する能力が既にない状態が前提ですが、「任意後見制度」は、そうなる前、つまり、まだ判断する能力があるうちに、自分の後見人になって欲しい人と「任意後見契約」を結びます。その際に、財産管理など、どのようなことを具体的にしてほしいのかを、予め決めておきます。そして、いざ判断する能力が不十分となれば、任意後見契約をした人が、後見人として財産管理などを行うという制度です。

例えば、居住している不動産の処分など、財産の処分についても、この「任意後見契約」の内容に含めて明記すれば、可能となります。

「備えあれば憂いなし」と言いますが、将来のことを見越して、自分の意思を託すことができるので、検討してみてはいかがでしょうか。

■家族信託

最後に、「家族信託」の制度をご紹介します。

その名の通り、自分の信頼する家族に、目的を決めて財産を託し、管理や処分を行ってもらう制度です。

具体的には、家族の中で託された人(受託者)が、目的や本人の希望に沿って、柔軟に財産管理を行うことができます。

この家族信託では、相続の後のさらに先まで自分で決めることができるという点に特徴があります。

なお、家族信託は家族の間で行うので、報酬を気にする必要もありません。

自分の財産だからこそ、最後までその意思を反映させたいという思いがあれば、非常に有効な制度といえます。



以上のとおり、元気なうちであれば、相続の対策を行うことはできます。

内閣府によれば、2012年の認知症患者数は462万人ですが、2025年には約700万人、65歳以上の高齢者の5人に1人の割合になると予測されています。

「体力も気力もまだ心配ない」と断言できる今だからこそ、相続に関する手続きを弁護士などの専門家に相談し、具体的な方法を検討してみてはいかがでしょうか。

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