自宅のみの遺産相続?円満解決への道

「父からの遺産は自宅の土地と建物のみ。自分も含めて3人の兄弟がそれぞれ相続したいと主張。果たしてどうしたらいいか…」

せっかくの遺産も、相続人が多ければトラブルの種になることもあります。そこで、今回は円満に遺産分割を進めるための方法を、遺産分割の基礎知識からまとめて解説します。



■遺産分割の割合は?

遺産を遺す故人が、具体的にどのように分けるか指定していない場合、相続する人たちはどのように分割すればいいのでしょうか。

実は、民法では「法定相続」という名目で、実質的な公平の見地から、「遺産を相続する人の優先順位」と「相続の割合」を、以下のように定めています(民法900条)。

・第1順位:直系卑属(子)1/2の割合・配偶者1/2の割合 

※子が既に死亡していれば、子の直系卑属である孫などが代わりに相続します。

・第2順位:直系尊属(父母や祖父母など)1/3の割合・配偶者2/3の割合

・第3順位:傍系の血族(兄弟姉妹や甥・姪など)1/4の割合・配偶者3/4の割合

なお、第1順位の相続が行われれば、第2順位以下の相続はありません。

今回のケース(遺言がなく、母親がいる場合)であれば、配偶者である妻(当事者からみれば母親)が1/2の割合、子ども(兄弟)は3人なので、それぞれが1/6の割合で、遺産を分割することになります。



■自宅の土地と建物の分割方法とは?

今回問題となるのは、相続する財産が「自宅の土地と建物のみ」というところです。

つまり、母親と3人の兄弟で分けるにしても、土地と建物は現実的に分けられないという問題が生じます。

それでは、実際に遺産をどのようにして分割するのでしょうか。

●分割の仕方は3種類

民法906条では、「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」と遺産分割の基準を定めています。

つまり、遺産である物の種類や性質に応じて、分割の仕方を決めるようにと解されているのです。現状では、以下の3つの方法で遺産を分割することとなっています。

・現物分割

遺産を現物のまま分割します。複数の遺産があれば、それぞれの現物を相続人に分けるといった形式です。ただ、現物に偏りがある場合は、配分された遺産の価額が全く同一というわけにはならず、不公平として一部の相続人が反対をする場合も考えられます。

なお、土地などの場合に、全員のものにする「共有」も現物分割の方法です。

・換価(価額)分割

遺産を売却して、お金に換えたのちに分割する形式です。一般的には、現物での分割が難しい場合や、現物を実際に分けるとその価値が下がる場合などに、この方法を取るようです。分割せずに現状のままで売却した方が高値の場合、結果的に多くの遺産を分割できるため、メリットがあるといえます。

・代償分割

現物を分けられない場合、例えば、農地や商店など小さくすれば事業に影響があるなど、細分化に適していない場合を想定しています。実際の方法としては、遺産の現物を特定の人物が取得し、その取得者が自分の相続分以外を金銭で支払う形式です。



■遺産分割の流れ

それでは、実際に遺産分割をするためには、どのように進めればいいのでしょうか。

●相続人同士の話し合い(遺産分割協議)

遺産をどのように分割するか、相続人全員で話し合うことが最初のステップといえます。

今回のケースであれば、以下の方法が考えられます。

・土地と建物を「共有」にする(現物分割)

・土地と建物を売却して金銭に変えて、分割する(換価(価額)分割)

・相続人のうちの1人が土地と建物を取得し、他の相続人に金銭で払う(代償分割)

どの方法を取るかは、自宅の土地と建物の状況によります。

例えば、自宅に兄弟のうちの誰かが住んでいるとなれば、住んでいる本人は何とかこのまま建物と土地を相続したいと思うでしょう。

その場合は、代償分割の方法で、住んでいる人が取得し、法定相続分を超えた余剰部分を金銭で他の相続人に支払うということで落ち着くでしょう。

逆に、自宅の土地と建物が誰も住んでおらず空き家で荒れ放題であれば、火災の可能性などもあり、売却して金銭で分割する換価分割がお勧めです。

一方、誰も自宅に住んではいないが、思い出の詰まった実家を残したいのであれば、全員で共有という現物分割の方法を取ることもできます。共有のため、実質的には利用に制限があり現実的な方法ではないといえます。

上記のように、相続人間の話し合いで、遺産に対してどのように考えているのか十分に協議する必要があります。



●家庭裁判所の「遺産分割の調停又は審判の手続」を利用する

話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の「遺産分割の調停又は審判の手続」を申し立てます。

「調停」では、調停委員が話し合いを進めて、合意に達するようなアドバイスや解決案を提示します。各相続人から事情や希望を聴き、場合によっては遺産についての鑑定を行うこともあるようです。全ての事情を考慮して出された解決案に対して合意に達すれば、遺産分割の手続きに移行します。

残念ながら合意に達しなかった場合は、自動的に審判手続が開始され、裁判官が審判をすることになります。



今回のケースは自宅の土地と建物がどのような状況であるかによって、分割の方法が変わってくるでしょう。様々な選択肢から、全員が納得して、円満に遺産相続ができるよう、弁護士などの専門家に中立的な立場で話し合いを進めてもらうのも一つかもしれません

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