相続手続き中に、遺言書に未記載の財産が出てきたら?

「父が亡くなり、相続手続きを進めていましたが、遺言書に未記載の財産が出てきました。せっかくの故人の遺言も無効?この遺産相続はどうしたらいいの…。」

遺産の相続は、残念ながら「争族」ともいわれるほど。故人の意思などお構いなく、親族間のトラブルは絶えません。

今回は、争いなく相続手続きができるようにと故人が遺言まで残したにもかかわらず、まさかの遺言書に未記載の財産が出てきたというケースです。相続人もこのような事態に陥るとは、夢にも思わないでしょう。

しかし、一般的に遺言書に相続財産漏れはありがちなケースといえます。慌てずもめず遺産相続ができるように、ここでは、遺言書の効力や、未記載の財産が出てきた場合の対処法を解説します。



■「遺言」って何?

遺言とは、故人の意思をその死後に実現させる制度です。

遺言は故人の意思であるため、遺言に書かれた内容は法律上優先されます。

つまり、法律で定められた相続人や相続の割合にかかわらず、故人は自分の財産を好きなように処分することを指定できるのです(遺留分という、最低限の取り分を侵害しない程度に)。

ただ、遺書のように思いを綴るものではなく、法律によって決められた形式で行うことが必要とされます。遺言の種類によっては、形式が整っていなければ無効となる場合もあるので注意が必要です。

なお、遺言が発見された場合は、家庭裁判所に検認を申し立て、内容を確認してもらいます。遺言が有効となれば、遺言を実現させるための「遺言執行者」を選任し、以下の作業を行わなくてはなりません。

・相続人の確定

・財産調査・財産目録の作成

この段階で、初めて相続財産を調査します。

どこに何の財産があるのか、遺産が多い場合は、故人が忘れているなどのケースもあります。確実に遺言を執行するために、遺言執行者は、プラスもマイナスも含めてすべての財産を調査しなければなりません。その結果、今回のケースのように、把握できていなかった財産が初めて出てくる場合もあるのです。

今回のケースであれば、遺言の形式に問題がなければ、出来る限り故人の意思を尊重し、遺言は有効のままとします。そして、遺言に未記載の財産のみ、新しく遺産分割するという方法がなされます。

■遺言書に未記載の財産の分け方とは?

それでは、具体的に遺言書に未記載の財産はどのように遺産分割するのでしょうか。

未記載の財産に対しては、遺言がない場合の遺産分割の方法と同じ対応となります。

民法に明文で定められている「法定相続」(民法900条)をベースに、話し合いということになるでしょう。

なお、「法定相続」とは、実質的な公平の見地から、法律に「遺産を相続する人の優先順位」と「相続の割合」が定められていることをいいます。

・第1順位:直系卑属(子)1/2の割合・配偶者1/2の割合 

・第2順位:直系尊属(父母や祖父母など)1/3の割合・配偶者2/3の割合

・第3順位:傍系の血族(兄弟姉妹や甥・姪など)1/4の割合・配偶者3/4の割合

■未記載の財産の相続手続きとは?

ここでは、未記載の財産の遺産手続きについて、実際にどのような流れになるかを説明します。一般的には、話し合い、まとまらない場合は裁判所の制度を利用というステップを踏むことになります。

・話し合い(遺産分割協議)

まずは相続人全員で話し合うことです。

今回のケースであれば、未記載の財産に対して、法定相続分での分割がベースとなるでしょう。

ただし、遺言の内容が相続人の誰か一人にのみ相続させるというのであれば、故人の意思を考慮して、同じように指定された一人に分割してもいいでしょう。

逆に、誰か一人にのみ相続させているのだから、他の人に分割をという話し合いの流れになるかもしれません。

なお、残された遺族の方が安心して暮らせるよう、また公平の見地から、法定相続分は決められています。後悔のないように、自分にも権利がある思えば、遠慮せずに話し合いで伝えましょう。話し合いが不安な場合は、弁護士などの専門家に相談すれば、同席してもらうことも可能です。

・家庭裁判所の調停

話し合いに応じない、話し合いをしてもうまくまとまらない場合は、家庭裁判所の「遺産分割の調停又は審判の手続」を利用します。

中立の立場である調停委員が、相続人全員から事情を聴きます。場合によっては資料等の提出を促し、遺産についての鑑定をすることもあります。全部の事情を把握して、助言、解決案の提示を行います。

解決案に対して合意となれば調停成立、合意に至らなかった場合は、自動的に審判手続が開始され、裁判官が、一切の事情を考慮して、審判をすることになります。



■相続手続き完了後に、遺言書に未記載の財産が出てきたら?

相続手続きが終わってしまった場合も同じ対応となります。

せっかく相続人全員が集まって話し合い、作成した遺産分割協議書に相続人全員の署名と捺印がなされた場合にも、すべてが無効となれば、これまでの労力が水の泡となります。このような徒労に終わらないためにも、遺言書をベースに行われた遺産分割に関してはまず有効として確定させます。そして、別件として、遺言書に未記載の財産についてのみ、新たに分け方を決めることになります。

なお、何度も未記載の財産が出てきては、その都度、遺産分割協議を行うのは大変時間がかかります。そのため、遺産分割協議書に下記事項を記載する場合もあります。

「新たな財産が見つかれば、すべて○○が取得する」

「その他一切の財産は○○が取得する」

上記の取り決めも検討してみてはいかがでしょうか。

故人の意思を尊重しつつ、相続人間でもめずに納得のいくような遺産分割が理想といえます。弁護士などの専門家であれば、法律の知識を兼ね備え、交渉術にも長けているため、相談してみるのもいいかもしれません。

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