子どもへの暴力で、離婚した夫の親権を喪失できる?

子どもは、体力的にも精神的にも、大人と比べて弱い存在です。離婚となれば、子どもへの繊細な気遣いが求められるといっても過言ではありません。そのような状態にもかかわらず、親権者から子どもへ暴力がふるわれていた場合、実際に親権を奪うことはできるのでしょうか。

ここでは、離婚後の親権の喪失や親権停止など、親権の制限について、まとめて解説します。



■「親権」とは?

そもそも、親権とは、子どもの財産を管理する「財産管理権」と、子どもの身の回りの世話を行い養育する「身上監護権」の2つを指します。

子どもがいる場合、離婚の際には、必ず「親権者」を決めておかねばなりません(民法819条1項)。



■場合によっては親権の制限(親権者の喪失・停止、管理権喪失など)ができる

親権者となっても、残念ながら、誰しもが子どもの利益に沿う行動をするとは限りません。

そのため、民法には、親権の喪失や停止など親権の制限についての規定があります。

ちなみに、平成29年の親権制限事件(親権の喪失や停止など)の新受件数は平成20年からの統計では過去最多の373件となっています。

http://www.courts.go.jp/saikosai/vcms_lf/20180420zigyakugaikyou_h29.pdf

 出典:最高裁判所事務総局家庭局 親権制限事件及び 児童福祉法28条事件の概況

(平成29年)

(1)親権喪失

民法では親権を喪失させることが可能だと定めています(民法834条)。

親権喪失が認められる理由として、条文に挙げられているのは、下記の3つの場合です

・父又は母による虐待

ここでの虐待は、身体的、心理的、性的虐待を含みます。

・父又は母による悪意の遺棄

悪意の遺棄はネグレクトなども含まれます。

・父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当で、子の利益を侵害するとき

「親権の行使が著しく困難」とは、生活に困窮して子どもを養育できない場合などがあたります。

(2)親権停止

親権喪失の審判の取り消しがない限り、無期限に親権を奪うこととなります。

そのため、旧法ではなかった親権停止を改正民法では認めることとなりました。

親権停止とは、最長2年間を限度に、一定の期間について親権を停止することです(民法834条の2)。

なお、親権停止が認められる理由としては、以下の場合となります。

・父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当で、子の利益を侵害するとき

(3)管理権喪失

親権全体ではなく、親権の一部である財産管理権だけを喪失させることもできます(民法835条)

なお、管理権喪失が認められる理由としては、以下の場合となります。

・父又は母による管理権の行使が困難又は不適当で、子の利益を侵害するとき

(4)親権喪失・停止などを申し立てることができるのは誰?

じつは、親権の喪失や停止を申し立てるのは、子ども本人からも可能です。

民法には具体的な年齢が記載されてはいませんが、一般的に、自分の気持ちや希望が分かる程度の意思能力が必要とされています。

なお、平成29年の申し立て件数のうち、子ども本人が申し立てた割合は、親権喪失が10.2%、親権停止が6.5%との結果が出ています。

その他にも、子どもの一方の親や子どもの親族、検察官、また児童福祉法により児童相談所の所長など第三者も行うことができます。

http://www.courts.go.jp/saikosai/vcms_lf/20180420zigyakugaikyou_h29.pdf

出典:最高裁判所事務総局家庭局 親権制限事件及び 児童福祉法28条事件の概況

(平成29年)



■親権喪失・停止後は、親権者変更の手続きをお忘れなく

親権喪失・停止などの手続きは、子どもの住所地の家庭裁判所に申し立てを行い、家事審判によって家庭裁判所が決定します。

なお、親権喪失・停止、管理権喪失の審判には専用の申立書の書式がないため、注意が必要です。この場合、家事審判申立書の定型書式を使用して申し立てをします。

また、忘れてならないのが、親権者変更手続きです。

親権が現在、元夫である相手方にある場合、親権が喪失・停止となれば、自動的に親権が変更されるわけではなく、単に親権者がいない状態となるのです。

離婚後の親権者の変更は,必ず家庭裁判所の調停・審判によらなければならず、この手続きを踏まなければ親権者とはなれないので、注意が必要です。



暴力などの場合は、親権喪失が認められる可能性が高いといえます。

なお、暴力などの身体的虐待では、子どもの生命・身体に実害が及ぶ可能性があります。審判の確定を待てば重大な損害を受ける恐れがある場合には、審判前の保全処分として、子どもの身柄を確保するなど、保全手続も検討する余地があります。

早期に弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

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