店長手当が支給されれば残業代はもらえない?

「店長になって役職手当はついたが、そのぶん残業代の支給がない。激務で労働時間も増えているのに収入は減っている…どうすればいい?」

管理職に昇進!と浮かれている場合ではありません。昇進前と比較して、明らかに業務時間が増え、精神的プレッシャーも多く、その上、残業代のカットで収入が逆に減っている!という状況に陥っていれば、即刻、「名ばかり管理職」を疑うべきです。

ここでは、「店長手当が支給されていれば本当に残業代はもらえないのか?」との疑問に対して、管理職と残業代の基礎知識や、重要なキーワードとなる「管理監督者」に触れながらご説明します。

■労働基準法の管理監督者なら残業代は出ない

労働基準法は、立場の弱い労働者の保護のために、労働時間や休憩、休日、賃金などの労働条件について制限を定めています。

例えば、労働時間であれば、休憩時間を除き週40時間、1日8時間を超えて労働させてはなりません(労働基準法32条1項及び2項)。また、労働時間の延長、休日労働の際は割増賃金を支払う必要があります(同法37条1項)。

しかし、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」、つまり管理監督者は、例外としてこれらの制限が及ばないとされているのです(同法41条2号)

■店長は管理監督者なの?

それでは、今回のケースのように、店長は労働基準法でいう管理監督者といえるのでしょうか。

名称だけで判断すれば、店長は、その店を管理し監督している立場にあるようにも思えます。しかし、店によっては、「雇われ店長」や、名称だけで他の従業員と何ら変わらない業務内容や待遇の「名ばかり管理職」の場合もあります。

●どうして管理監督者は例外扱いなの?

そもそも、管理監督者は、経営者と一体的な立場であることから、様々な裁量権を持ち、時間に関係なく経営上の判断や対応が必要となります。そのため、労働基準法で定められた労働時間などの制約がそぐわないといえます。また、職務の重要性から、給与や賞与、その他の待遇で、他の従業員と比較して相応の待遇がなされているため、労働者の保護に欠けることもありません。

このような理由から、管理監督者は例外的な取り扱いがなされても、問題ないのです。

●管理監督者の要件とは?

上記の理由から、管理監督者に該当するには、形式的な名称で判断するのではなく、職務内容、権限、勤務態様、待遇などを実質的に判断すべきといえます。

具体的に、厚生労働省では、下記の4つの判断基準を示しています。

ⅰ労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容

を有していること

ⅱ労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権

限を有していること

ⅲ現実の勤務態様も労働時間等の規制になじまないようなものであること

ⅳ賃金等についてその地位にふさわしい待遇がなされていること

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/dl/kanri.pdf 出典:厚生労働省 「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」

なお、判例においては、日本マクドナルドの店長の訴えに対して、管理監督者に当たらず、残業代等約750万円の支払いが命じられた判決もあります(平成20年1月28日東京地方裁判所)

アルバイトの採用権限があり、店長という名称であっても、経営者と一体的な立場とはいえず、労働時間の決定に自由な裁量がなかった点や、待遇面では下位職の年俸と比べて差額が年額44万円程度である点などが考慮され、管理監督者と認められないと、実質的に判断しています。

■残業代が支給されるためには?

まず、会社と交渉することです。現在の職務内容や待遇など客観的にみて、管理監督者とはいえないと判断する場合は、他の従業員のように、労働時間の制限や残業代の支給など、同じ取り扱いがなされるべきだと、話をすることが必要です。

なお、会社と交渉しても一向に改善がなされない場合は、労働基準監督署や労働局、また法律の専門家である弁護士などに相談することをお勧めします。

場合によっては、訴訟となる可能性もあるので、しっかりとアドバイスをもらい、並行して、日頃から実際の業務時間を記録するなど、証拠となるものを確保しましょう。

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