年俸制でも残業代はもらえる?もらえない?

「年俸制の場合、残業代は発生するのか…」

非常に単純な疑問ですが、じつは間違った認識を持っている人も少なくありません。恐らく、野球選手や外資系の専門職に代表される「年俸制」のイメージが先行したからでしょう。

しかし、近年は専門職に限らず、年俸制を取り入れる企業も増えてきています。そこで今回は、年俸制について、基本的な内容や残業代との関係について、解説していきます。

■年俸制でも当然に労働基準法の適用を受ける

年俸制とは、「賃金を1年単位で決定し、労働者の能力や業績の評価で決定する賃金制度」のことをいいます。担当職務と実績に応じて賃金が変動するため、成果主義の一つともいわれています。

「年俸」という言葉から特別なイメージがありますが、単に給与体系が異なるだけです。月々の給与で取り決める月給制に対し、年収額で賃金を取り決めて月々に分割して支払われる違いがあるだけといえます。そのため、年俸制も同じく労働基準法の適用を受けます。

具体的には、実際に働いた時間が労働基準法で定める労働時間を超えれば、一部の労働者を除いて、割増賃金を支払う必要があるのです(労働基準法37条、41条)。

なお、野球選手などに用いられる年俸制は、従業員という立場としての契約ではありません。使用者と労働者という関係ではなく、個人事業主として対等なパートナーという立場です。雇用契約ではなく業務委託契約のため、労働基準法の法定労働時間などの規定は適用されないのです。

■みなし残業代が含まれた年俸制でも、場合によっては残業代がもらえる

年俸制で多くの誤解を生む原因は、年俸の中に、「みなし残業代(固定残業代)」が含まれているからでしょう。

そもそも「みなし残業代(固定残業代)」とは、予め1ヵ月間に残業する時間を想定し、相当する割増賃金を基本給に上乗せして支払う制度のことをいいます。

ただし、この場合でも、当初予定していた残業時間を超えて労働した場合は、残業代を支払う必要があります。

具体的には、年俸制であっても、給与の決め方が1年単位となるだけで、基本的な労働時間や割増賃金の考え方は同じであり、労働時間を管理する必要があります。その上で、当初予定していた残業時間も超えている場合は、その分の割増賃金を残業代として支払わなければなりません。

■就業規則や労働契約書で年俸制の内容をチェックしよう

ここまで読まれて、「残業代がもらえない…」と思われた方も、一度立ち止まって、就業規則や雇用契約書の確認をお勧めします。

●みなし残業代の注意事項は3つ

特に、みなし残業代(固定残業代)の記載については、判例で示された基準があります(大阪地裁 平成14年5月17日判例)。

・年俸に「時間外労働等の割増賃金が含まれていること」が労働契約の内容として明らかであり合意している

・割増賃金相当部分と、通常の労働時間に対応する賃金部分とが区別できる

・割増賃金相当部分が、法定の割増賃金額以上支払われている場合

この3つの要件を満たしていることが前提です。

例えば、「年俸には割増賃金相当部分が含まれている」と企業側が残業代の支払いを拒んでも、割増賃金相当部分と通常の労働時間の賃金部分とが区別できなければ、別途、残業代を請求できる可能性があります。一方で、上記の3つの要件を満たし、かつ、年間の割増賃金相当額に対応する時間数を超えて労働していなければ、別途、残業代は請求できません。

残念ながら、企業から自発的に残業代を支給することは多くありません。法定労働時間を超えて、もしくは年間の割増賃金相当額に対応する労働時間を超えて労働した場合に、こちらから残業したことを証明し、企業側がこれを認めて、ようやく残業代が支払われるパターンが大半です。

しかし、働いた分は正当に評価され、対価を支払われるのが本来の労働の在り方です。

まずは、弁護士などの専門家に就業規則や雇用契約書を確認してもらい、残業代が可能かどうかご相談することをお勧めします。

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