「親子の縁を切る!」といわれた両親の遺産でも、相続権はあるの?

両親や兄弟と関係円満な人がいる一方、世の中にはさまざまな事情から不仲になってしまう人も。「両親とは10年以上連絡を取っていない」「母とは訳あって絶縁している」「親子の縁を切ると言われた」など、家族と長く絶縁状態になっている場合でも、預金や土地などの財産の相続権はあるのでしょうか。

絶縁状を叩きつけられても法的根拠はない

弁護士事務所では、時折「絶縁状を出すことで相続をさせないようにすることはできないか」といった相談を受けることもあるようです。絶縁状とは「○○とは親子の縁を切る」という内容の文書なのですが、相続に関して法律上の意味はあるのでしょうか。

結論からいうと「親子の縁を切る」との絶縁状に法律上の意味はありません。法律上、財産を取得する相続人は“配偶者”や“子”などとあらかじめ決まっています。法律上の相続人が相続できなくなるケースは次の3つの事項です。

相続欠格

相続人が被相続人を死亡させたり、被相続人が一旦は作成した遺言を効力のないものにさせたりした場合に、相続権を直ちに失うという制度です。

廃除

相続人が被相続人を虐待したりした場合に関係者が裁判所に申し出て相続権をはく奪するという制度です。

相続放棄

相続人が、相続発生後に相続を辞退するという制度です。

逆にいえば、これ以外には相続人が相続権を失うことはないのです。絶縁状を叩きつけること、すなわち「親子の縁を切る」ということは、上記のいずれにもあたりませんので、相続人は相続権を失うことにはなりません。

「相続させない」という遺言書がある場合

では、遺言書で「親子の縁を切るので長男には財産を一切相続させない」といった内容のことが書かれている場合はどうでしょうか。相続人が長男と次男だけの場合、これは「長男には相続させず、次男には全財産を相続させる」という遺言書がある場合と基本的に同様と考えられます。

このような遺言書で長男の相続権をはく奪することができるのでしょうか。

答えとしては、完全に相続権をはく奪することはできませんが、長男が次男に対して財産を渡すことを要求しなければ実際上はく奪することができます。

遺言書では、被相続人が自らの財産について、金額や渡す相手を自由に決めることができます。渡す相手については、法律に書かれた相続人以外も指定することができます。

但し、兄弟姉妹以外の相続人については、遺 留分というものを有しています。遺留分とは、被相続人がどのような遺言書を書いたとしても、被相続人が有していた一定の財産について兄弟姉妹以外の相続人が受け取れるという権利です。この遺留分があるがゆえに、被相続人は兄弟姉妹以外の相続人の相続権を完全にはく奪することができないのです。

「一切相続させない」と書かれた相続人は、遺言書で相続人が取得するとされた財産につき、他の相続人に対して遺留分を主張して財産を渡すように求めることができます。他の相続人が渡さない場合には裁判所に訴えることもできるのです。

一方、「長男には財産を一切相続させない」という遺言書が、上記で説明した廃除を求める意思表示として扱われる場合もあります。この場合で廃除が裁判所に認められたときは、その相続人が遺留分を有しているかどうかにかかわらず、相続権を失うことになります。

なお、遺言書は、文言の内容、遺言書が書かれた状況、被相続人の生前の状況等によって解釈が変わる可能性がありますので、解釈が問題となりうる場合には慎重に判断することが必要です。

このように遺言書を書いたとしても財産の帰属を決定することしかできず、かつ遺留分の問題が残りますが、財産の利用・処分方法を制限したいような場合(土地を分割したくないような場合)には家族信託を活用することが有効な場合もあります。

まとめ

絶縁状や遺言だけでは完全に相続人の相続権をはく奪することはできません。遺産を保有する側は、相続させたくない者にも財産が渡ってしまうことを想定して相続を計画する必要があります。一方、遺産を受け取る側も、絶縁状態だったからと言って、何も受け取れない訳ではありません。自分の置かれている立場を法律的な観点から理解する必要があります。複雑な場合は、弁護士に相談をしてみましょう。

文:荒木俊和(弁護士)

関連記事