タクシーと交通事故を起こすと面倒な理由

「タクシーと交通事故を起こすと厄介だ」という話を聞いたことはありませんか? 全国で営業しているタクシーの台数は、平成25年3月末時点で、24万3千台余りです。これだけの台数のタクシーが営業していれば、タクシーとの交通事故にあってしまうことも大いに考えられます。ここでは、「タクシーと交通事故を起こすと厄介だ」というウワサの真偽について考えてみましょう。

タクシーとの事故が要注意といわれるワケ

タクシー会社に請求せざるを得ない

交通事故にあって、被害額について賠償をしてもらいたいと考えた場合に、だれにその賠償を請求するかというと、通常は加害者、つまり車の運転をしていた者ということになります。

タクシーとの事故であれば、タクシーの運転手ということになりますね。しかし、タクシーの運転手に賠償を請求したとしても、業務中の事故に関して個人で保険に入っているわけではないでしょうから、高額な賠償額には対応できません。

この場合、タクシー会社に請求することが考えられますが、それは可能なのでしょうか? 

民法では、事業のため他人を使用する者(タクシー会社)は、従業員(運転手)が自分の仕事に関して他人に加えた損害を賠償する責任を負うと定められています。

また、自動車損害賠償保障法という法律では、自動車を運行させている者(タクシー会社)には、その運行によって他人にけがをさせたりした場合の損害賠償の責任があるとされています。

したがって、タクシー会社に請求することは可能です。というより、妥当な額の損害賠償を得るためには、タクシー会社に請求せざるを得ないといえます。

任意保険には入っているが……

タクシー会社に請求するといっても、タクシー会社が任意保険に入っていれば、相手は保険会社となるので、他の交通事故と変わらないじゃないかということになりそうです。

たしかに、タクシー会社には、任意保険に加入する義務があります。しかし、財産上の損害に関しては、30万円以下の免責(保険会社が保険金を支払わなくてもよいということ)を付けることができるので、損害額が低額の物損である場合には、タクシー会社が直接の交渉相手となります。

タクシー会社は事故処理に慣れている

タクシー会社は、多くの車両を抱えていますし、1台のタクシーの走行距離も長いので、それだけ事故のリスクがあります。そこで、タクシー会社には、事故を処理する専門の部署があることが多く、そのような部署では事故の処理が日常業務ですから、事故に関する知識・経験において一般の方とは相当な差があります。

タクシー会社としては、任意保険が免責されるような物損事故であれば、損害賠償額が会社の持ち出しとなりますので、いかに賠償額をゼロに近づけるかということを考えて交渉します。

また、人身事故であっても、任意保険を使うと保険料が上がりますので、できるだけ任意保険を使わないように、つまり「タクシー会社には責任がない」という論法で交渉することも考えられます。

このような態度をとる可能性があるタクシー会社を相手に、賠償の交渉をしなければならないので、タクシーと交通事故を起こすと面倒だといわれるのです。

タクシーにお客さんが乗っていた場合

タクシーと交通事故を起こし、そのタクシーに乗っていたお客さんがけがをした場合、そのお客さんへの賠償はどのように行うのでしょうか。

タクシー又は自分にのみ責任がある場合

例えば、自分が信号待ちで停車していたときに、タクシーに追突されたという場合、この事故の責任はタクシーのみにあります。

この事故でタクシーのお客さんがけがをすれば、その賠償はタクシー会社のみが行うこととなります。

双方に責任がある場合

タクシーと自分の双方に責任がある場合はどうでしょうか。

この場合、タクシーのお客さんは、タクシー会社と自分のどちらにでも賠償額の全額を請求することができます。

例えば、賠償額が10万円の場合、自分に10万円を請求されればその全額を支払わなければいけませんが、実際にはタクシー会社に60%、自分に40%責任があるのであれば、6万円分はタクシー会社に請求することができます。

まとめ

タクシーと交通事故を起こすと面倒だといわれる理由は、事故処理に慣れていること、またタクシー会社の保険料の問題や人を乗せて走っていることなどの事情が複雑である点にあります。安全な走行を心がけていても、事故は思わぬときに起こります。万が一のときの知識として、このような事情を知っておいてもソンはないでしょう。

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