遺産なんていらない!「相続放棄」とは何か?

「家庭や親戚と遺産でモメたくない」「折り合いが悪かった人から遺産をもらいたくない」「借金は相続したくない」……。さまざまな理由によって遺産放棄をしたいと考える場合、相続放棄という選択肢があります。相続放棄とは、どのようなものなのでしょうか。

どんなもの?相続放棄という方法

相続放棄とは、言葉のとおり「相続することを放棄する」ということです。では相続放棄というのはどのような制度でしょうか。相続放棄をすると、借金などのマイナスの財産を承継する必要がなくなる一方で、不動産や現金などのプラスの財産も承継できなくなります。なお、相続放棄をするために特別な理由は必要ありません。

特に注意が必要なのは、自分が相続放棄の手続きをすると、相続に関する権利義務がすべて後の順位の相続人にいく点です。例えば、父親が多額の借金を残して亡くなったとします。通常、父親の遺産を相続するのは母親と子どもですので、本来であれば母親と子どもが父親の遺産を相続して手続きが終わります。しかし母親も子どもも多額の借金を返済できないと考えて相続放棄をしたとします。すると、今度は父親の両親へ、その後は兄弟姉妹へと、法定相続人の順位どおりに相続権がまわっていきます。つまり全員が相続放棄をしたければ、法定相続人の順位にしたがって第三順位までの相続人すべてが相続放棄の手続きを行う必要があるのです。

相続放棄をするための手続き方法

では、相続放棄をするためにはどのような手続きが必要なのでしょうか。相続放棄を希望する人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ相続放棄の申述をする必要があります。相続放棄の申述に必要な費用は、申述人1人当たり800円分の収入印紙および連絡用の郵便切手のみです。あとは必要書類を揃えて家庭裁判所へ提出するだけです。

いわゆる「遺留分」はどうなる?

「遺留分」とは、亡くなった人(被相続人)が全財産を第三者へ承継させるなどの遺言を残した場合に、一定の関係者に一定の割合で相続する権利を認めるという制度です。では、自分で相続放棄の手続きを行った後に、「遺留分」を主張することはできるのでしょうか。

この点について、民法では「遺留分を主張できるのは兄弟姉妹以外の相続人である」と定められています。そして相続放棄をした人は、初めから相続人ではなかったことになるとも定められているのです。そのため、相続放棄の手続きを行った後に遺留分を主張することはできません。

まとめ

さまざまな事情や状況から、遺産放棄をする場合の相続放棄の手続き。一度手続きをしてしまうと、自分の遺留分も主張することができなくなってしまいます。そのため、本当に遺産放棄をしてよいのかどうか、熟考してから行うことが大切です。

 

文:丹所美紀(行政書士)

  • 裁判所|相続の放棄の申述
    http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_13/

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