勝手に自分の写真や映像を撮られて放送された…これは盗撮行為?

休日の昼下がり。寝ぼけまなこをこすりながら情報番組を見ていると、この前観戦したスポーツの試合がテレビに映りました。「会社には病欠って言ったけど、実は観に行ってたんだよね」なんてニヤけていたら、見慣れた自分の顔が映っている‼ 会社の上司にばれたらどうしよう……。

最近、行列できるレストランや街角の撮影で、通行人の顔にモザイクをかけて放送する番組をよく見ますよね。しかし、コンサートやスポーツ観戦では、観客席にいる人の姿をクローズアップして映すことも珍しくありません。こうした行為は盗撮にならないのでしょうか。

あなたはちゃんと知っている?肖像権の考え方

人の顔や姿を勝手に撮影するというと、まず肖像権の侵害という問題が出てきます。実は、肖像権というものは法律上、明確に定められているものではありません。とはいえ、はっきりと「肖像権は保護される」と個別に法律で定めなくても、本人の同意がなく、容ぼうなどを撮影されない権利、そしてそれを公表されない権利は、しっかりと保護されると考えられています。したがって、勝手に自分の写真を公表されれば、肖像権の侵害として、損害賠償請求や、放送、出版の差し止めなど、法的な措置が可能です。

ニュースや中継は問題ないの?

しかし、実際にテレビをつければ、ニュースや中継でスポーツの観戦者がよくアップになって映っています。これは肖像権の侵害として法律上、問題ないのでしょうか。

これは、実はかなり難しい問題をはらんでいるのです。肖像権の基本的な考え方からすれば、勝手に他人の容ぼうを撮影して、それを公共の電波に乗せて放送することは、肖像権の侵害であり、認められません。昨今は、情報の拡散が非常に早いことを考えても、個々人の容ぼうは当然ながら肖像権として保護されます。

しかし一方で、ニュースや中継などは「報道」という側面を持ちます。つまり、報道機関は「そのような事実が存在した」ということを報道する自由をもっており、それは報道機関の利益というよりも、公共的な意味ももつものです。したがって、その2つのどちらを優先すべきかという非常に微妙な問題があるのです。

スポーツ観戦などでは、観戦者でも中継があり得ることを分かっていますから、その意味でも、ほとんどの場合が問題は表面化せず、おざなりな側面もあります。

肖像権のほかに、プライバシー権という言葉もよく聞きますね。プライバシー権というのは、もっと広く、私生活上の事柄を勝手に公表されないという権利を意味するとされています。非常にざっくりと言えば、プライバシー権のうち容ぼうに関する部分について抜き出したものが肖像権といえるでしょう。

勝手に個人を撮ることは盗撮にはならないの?

「盗撮」は、法律上の用語ではありません。しかし、普通「盗撮」というと犯罪行為を意味しますから、犯罪としての盗撮が規定されている都道府県の迷惑行為防止条例に違反するか、という意味で問題を考えてみましょう。

迷惑行為防止条例では、人の衣服に覆われている部分を撮影することや、そのほか卑わいな言動をすることを処罰するとしています。したがって、中継などで勝手に人の容ぼうを撮影したからといって、刑事罰を受けるということにはならないでしょう。もちろん、前述のように、肖像権の侵害として責任を負う可能性はあります。

まとめ

勝手に自分の写真や、映像を撮られて放送されることは肖像権の侵害として、撮影した人は責任を負う可能性はあります。とはいえ、現状では放送されてしまった観戦者も放送局や撮影者を訴えるということもありません。肖像権の侵害としてこうした放送のあり方に規制がされるか否かは、わからない状況だといえるでしょう。

文:石崎冬貴(弁護士)

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