競輪選手の自転車による交通事故、職業は裁判で影響があるもの?

先日、現役の女子競輪選手が自転車で走行中の女性と接触する事故がありました。競輪選手といえば、自転車のの運転を専門にする職業です。交通事故が起きた場合、こうした職業が与える影響はあるのでしょうか。

裁判で職業は左右されるもの?

交通事故を起こしてしまった場合の責任としては、刑事上の責任、民事上の責任、行政上の責任があります。このうち裁判が関係してくる責任は、刑事上と民事上です。

刑事上の責任

自動車による交通事故で刑事上の責任を負う場合には、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(自動車運転死傷行為処罰法)により罰せられることとなります。例えば、この法律に規定されている罪に「危険運転致死傷罪」があります。これは、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為など、一定の類型に当てはまる行為をした者が罰せられるものです。

この危険運転致傷罪で罰せられるに当たって、レーシングドライバーだから、タクシー運転手だからという職業面だけをとらえて罪が重くなるということはありません。同じように、自転車による交通事故で刑事上の責任を負う場合には、刑法の過失傷害罪や重過失傷害罪により罰せられることとなりますが、競輪選手だからという職業面だけをとらえて罪が重くなるということはありません。

民事上の責任

交通事故による民事上の責任としては、損害賠償責任があります。この民事上の責任についても、競輪選手だからという面だけをとらえて、通常の人と比較して慰謝料の額が増額される、過失割合が大きくなるということはありません。

例えば、信号機のない交差点で、直進してきた競輪選手の自転車と、右折しようとした自転車が衝突した事故に関する判例では、事故当事者にプロの競輪選手がいたとしても、そのことによって公道上を自転車で走行する場合の注意義務が増したり、減ったりすることはないと判断しています。過失とは、要するに注意義務の違反ですから、注意義務が増えたり減ったりしないということは、過失割合も職業だけを理由としては増減しないということになります。

この事故の場合、どちらに過失があるの?

2015年3月に発生した競輪選手と歩行者との事故の場合、どちらにどの程度の過失があることになるのでしょうか。報道によれば、事故現場は片側1車線でほぼ直線の車道でした。道路が渋滞していたため道路の左側を走行していた競輪選手と、信号機のない場所を横断して渋滞中の自動車の間から出てきた歩行者が出合い頭にぶつかったとのことです。

自転車と歩行者との事故で、発生した場所が横断歩道や交差点から離れている場合の過失割合は、歩行者が20%、自転車が80%というのが基本となります。ただし、本件交通事故の場合、歩行者が渋滞中の自動車の間から出てきたようです。この場合、歩行者の直前直後に車両があり、見通しが悪い状況だといえますので、歩行者により高度の注意義務が発生します。そこで、基本的な過失割合から、歩行者に10%程度過失割合が加算され、おおむね歩行者が30%、自転車が70%ということになりそうです。

まとめ

以上のように、交通事故を起こした当事者の職業によって裁判等で影響があるかというと、必ずしもそうとはいえないということになります。ただ、世間的には、「プロなのだから」、「専門家なのだから」という目で批判的に見られることもありますので、競輪選手が公道を走行する場合は、より注意が必要かもしれませんね。

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