交通事故の示談の基礎知識 「示談金」と「慰謝料」の違いは?

交通事故は、社会生活を送る人なら誰にとっても身近な問題です。もし事故に遭って被害者になったら、加害者側と示談交渉を行うことになります。その際、「示談金」とはどんな賠償を指すのでしょうか?また「示談金」と「慰謝料」は何が違うのでしょうか?交渉前に知っておきたい基礎知識を紹介します。

1.交通事故の示談金とは?慰謝料との違いは? 示談交渉・示談金の基礎知識

交通事故における「示談」とは、事故でけがを負った、自動車が破損したといった損害の賠償問題を加害者と被害者が話し合って解決することです。交通事故の損害賠償をめぐっては裁判まで発展するケースは少数で、ほとんどは示談交渉で合意に至っています。示談の結果として加害者が被害者に支払う損害賠償金のことを「示談金」と言います。

加害者が支払うお金といえば「慰謝料」という言葉を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、慰謝料は示談金の一部にすぎません。示談金の中には、医療関係費や休業損害など様々な賠償が含まれています。

示談交渉のタイミング

示談交渉が始まるタイミングは、人身事故の場合はけがの治療が終了した時点が一般的です。「症状固定」といって、これ以上治療を行っても症状が回復しないという医師の診断をもって損害賠償の金額を算出していきます。死亡事故の場合は、葬儀・法要等を執り行う遺族がある程度落ち着く時期を選びます。四十九日法要を終えてから交渉を開始することが通常です。注意したいのは、一度示談が成立すると、被害者は加害者に対して追加の示談金を請求できなくなるという点です。例えば、示談が成立した後にけがの治療費が増えたとしても、示談で決まった以上の金額は支払ってもらえないので自己負担となります。

示談金を請求できるのは原則被害者本人

加害者に示談金を請求できるのは原則として被害者本人ですが、被害者が事故で亡くなった場合は相続人に請求権があります。また、被害者が未成年の場合は親権者が、成年被後見人の場合は後見人が本人に代わって請求することが可能です。

一方、示談金を支払う責任を負うのは加害者本人だけとは限りません。例えば、運送会社のトラック運転手が業務中に人身事故を起こした場合、会社には使用者責任があるため、会社が損害賠償責任を負います。また、激しい事故では加害者が死亡するケースもありますが、この場合は加害者の相続人が損害賠償責任を負うことになります。

示談交渉には裁判所等が介入することはなく、事故の当事者どうしが直接交渉を行います。最近では自動車保険に示談交渉代行サービスが付いていることが多くなりました。この場合は加害者・被害者がそれぞれ加入している保険会社の担当者が示談交渉の窓口となります。

2.示談金の具体的な中身とは? 医療関係費・休業損害・逸失利益など

では示談金(損害賠償金)とは具体的にどういった被害に対して支払われるのでしょうか?人身事故の示談金の内訳は、大きく分けて「財産的被害」に対するものと「精神的被害」に対するものの2種類があります。

財産的被害は、被害の性質によって「積極損害」と「消極損害」に分かれます。積極損害とは被害者が事故に遭ったことで発生した支出、消極損害とは被害者が事故に遭っていなければ得ていたと考えられる収入のことです。財産的被害の内訳について、傷害事故と死亡事故に分けて説明します。

【傷害事故の場合】

<積極損害>

・医療関係費

入院・通院によるけがの治療費は原則として実費相当額を請求できます。近親者や職業看護人が付き添った場合も実費を請求可能です。また、治療終了後に後遺障害が残り常時介護が必要になった場合は、被害者が平均余命を迎えるまでの介護費の請求が認められます。

・雑費

入院中には医療関係費以外にもタオルや洗面用品などの日用品が必要になり、その購入に必要な雑費も請求できます。通院にかかった交通費も加害者側に請求できますが、タクシー代は利用の必要がある場合に限られます。また、後遺障害は残った場合は治療等のための将来の交通費が認められるほか、平均余命までの将来の雑費も認められることがあります。

<消極損害>

・休業損害

休業損害とは、被害者が事故でけがを負い、治療のために働けなかった期間の損害です。金額の算出方法はサラリーマンか自営業者かなど仕事によって異なります。例えばサラリーマンの場合は事故前3か月の平均給料を元に計算して、休業が長期となりボーナスに関わる場合はその分も補償対象です。

・逸失利益

傷害事故の逸失利益とは後遺障害によって減った収入の推計のことです。症状固定後に後遺障害が残ると、被害者は事故前と同じようには働けなくなり、本来なら得られたはずの収入を失ったことになります。そこで被害者は加害者に逸失利益を請求できるのです。逸失利益の金額は、事故前の収入や、後遺障害の等級認定に応じて定められた「労働能力喪失率」等を元に所定の計算式に当てはめて算出します。一方、後遺障害が残っても収入が減少しない場合は、逸失利益が認められないケースがほとんどです。

【死亡事故の場合】

<積極損害>

・被害者が死亡するまでの医療関係費

入院中の治療費や付添人費用など、具体的には損害事故の場合と同様です。

・葬儀関連費用

葬儀費用だけでなく、四十九日法要の費用、仏壇・墓碑の費用が一部認められる場合もあります。

<消極損害>

・逸失利益

死亡事故の逸失利益は、被害者が亡くならなければ得られたであろう収入の推計です。例えばサラリーマンの場合は、事故前の年収を基準に、生活費の控除や就労可能年数等を考慮して所定の計算式に当てはめて算出します。

3.慰謝料は算定基準によって相場が異なる

慰謝料とは、精神的被害に対する損害賠償金のことです。傷害事故の場合はさらに入院・治療に対する慰謝料と後遺障害に対する慰謝料に分けて金額を算出します。

慰謝料の算定には主に3つの基準が使われています。弁護士会基準、自賠責保険の基準、任意保険の基準です。このうち最も金額が高いのは弁護士会基準となっており、日弁連交通事故相談センターは傷害事故・死亡事故の慰謝料の目安ついてそれぞれ以下のような基準を定めています。

【傷害事故の慰謝料】

<傷害部分>

傷害部分の慰謝料は、通院や入院の期間に応じて価格帯が設定されています。ただし症状が特に重い場合は価格帯の上限からさらに2割程度の増額が認められることもあります。

<後遺障害部分>

後遺障害が残った場合は、その分の慰謝料も請求できます。慰謝料の価格帯は後遺障害の等級に応じて設定されています。後遺障害が特に重い場合は、被害者本人だけでなく親族に対する慰謝料が認められる場合もあります。

【死亡事故の慰謝料】

被害者が亡くなった際の慰謝料は、家計における重要度によって金額が異なります。被害者が一家の支柱の場合(父親など)が最も高額です。

示談金として少しでも多くの慰謝料を受け取りたい方は、弁護士に相談して弁護士会基準に基づく請求を行うとよいでしょう。

ここまで示談金について財産的被害と慰謝料があることを説明しましたが、加害者に請求できる金額は必ずしも満額ではありません。例えば被害者が道路に飛び出したことが原因で事故が起こったケースでは被害者に過失があるため、その責任の割合に応じて減額となります。これを過失相殺と言います。

今回は示談金について知っておきたい基礎知識を紹介しました。示談交渉において加害者の保険会社の担当者の主張を鵜呑みにしてしまうと、知らないうちに示談金を低く抑えられてしまう恐れがあります。被害者が適切な賠償を得るためには、けがの程度や仕事への影響などから妥当な示談金額を把握して交渉に臨むことが大切です。次回は示談金の各項目の相場についてご紹介します。

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