交通事故の損害賠償、どこまで支払うもの?

軽くぶつかっただけの交通事故で、被害者は特にけがをした様子もないのに、5,000万円を超える損害賠償を請求されました。このような高額な損害賠償でも、相手の言いなりに支払わなくてはならないのでしょうか?

損害賠償には何が含まれるのか?

「軽くぶつかっただけ」でも、衝突してしまった以上、過失運転致傷罪という犯罪に該当します(自動車運転死傷行為処罰法5条)。貴方に落ち度があるのですから、それなりの負い目も感じているはずです。そのためか、被害者から「損害賠償しろ」と強く言われたら、なかなか拒めないことが多いのではないでしょうか。

ところで、そもそも交通事故で被害者に賠償しなければならない「損害」って何なのでしょうか。一般的に、交通事故の人傷(人がけがをすること)の損害には以下のような損害が含まれます。

  • 治療費
  • 将来の介護費(親族であれば1日8,000円程度)
  • 入院雑費(1日1,500円)
  • 入通院の交通費
  • 休業損害
  • 後遺症がある場合の損害
  • 慰謝料

ただし、損害賠償にはもう一つ大きな要件があります。それは、相当因果関係と呼ばれる「交通事故によって通常発生する損害」といえるかどうかという要件です。

今回のケースでは5,000万円を超える請求ということで、そもそも交通事故の損害に含まれるのか、仮に含まれるとしても「通常発生する」といえるのかを考えていかなければなりません。

なお、被害者が超高額所得者の場合は、休業損害が5,000万円になることも考えられなくはありません。ですが、多くの事例では、通常は5,000万円もの損害が発生することはないと判断されます。

高額な賠償金を請求されたら、どう対処したらいい?

ただ、いざその場面になると、あなたは加害者の立場になるので、自分自身で具体的な対処をすることは難しいかもしれません。

そのようなときには、もし任意保険に加入しているならば、保険会社に交渉を任せるのがよいでしょう。しかし、保険会社と契約をしていない場合には、自分で支払っていかなければなりません。その際最も有効なのは、「悩まず、すぐに弁護士に電話して相談する」ことです。

被害者が5,000万円という額を根拠なく吹っ掛けている場合もあれば、本当に相手が高額所得者であり、休業損害として超高額になるということもなくはありません。ただ、いきなり5,000万円も請求するような人ですから、変わった人であることが予想されます。そのような人と直接交渉した場合、録音され、下手に「いくらまでなら支払う」といったことの言質を取られ、後で不利な状況に陥ることも考えられます。

弁護士が介入した場合、まずは相手方に損害の明細を出すように交渉します。そして、その明細を踏まえて、裁判例に照らして、その損害が通常発生するものかどうかを検討し、妥当な金額に調整することが可能となります。

あなたが罪を犯したとしても、通常支払うべき以上の額を払う必要はありません。当たり前の処理をするためにも、第三者である弁護士に相談すべきなのです。

まとめ

交通事故の加害者になると、被害者から無茶苦茶な要求をされても、その要求になかなか対抗できないかもしれません。そのようなときには弁護士が関与することで、きちんとした額に抑えることが可能になります。

ただ、そうはいっても、自動車に乗る限りさまざまな事故に巻き込まれる可能性はあります。最悪の事態に備えて、任意保険に加入することは忘れないほうがよいでしょう。

文:杉浦智彦(弁護士)

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