取引先が請求書を無視?まずは督促状。次に内容証明郵便を

取引先から受注をした商品を納品。月末までに代金を銀行口座に振り込んでもらうよう、期日を指定して請求書も送った。しかし、月末を過ぎても何の音沙汰もない。「うっかり振り込みを忘れているのだろう。」と思い、再度請求書を送付。やはり返事もなければ振り込みもない。もしかして、これは無視なのか?いったいどうしたらいいのだろうか。

品物を納品したときの売掛金など、何らかの債権を持っている場合は、債務を履行すべき相手方に債務の履行を請求することができます。しかし、相手方がこちら側の請求に素直に応じるとは限りません。相手方がなかなか債務を履行しない場合は、まず裁判外の交渉手段として督促状や内容証明郵便を使って相手方に債務の履行を促すことができます。

まずは督促状を送ってみる

請求書を出してしばらく待ってみたが、やはり返事がない。電話をしてもなぜか留守電ばかり。このまま代金を振り込んでもらわなければ、わが社としても損失が出る。そこで、知り合いの弁護士に相談してみると、「督促状を送ってみてはどうか」と提案されたので、さっそく準備に取りかかった。

一般に、ある企業と何らかの商品やサービスに関する取引をすると、売掛金が発生します。商品・サービスを売った側は、その売掛金について請求書を作成して相手方に送付し、相手方が指定された期日までにその代金を支払うのが通常の取引の流れです。

支払請求に応じない場合は督促状を出しましょう

相手方に請求書を送ったり、支払請求の電話をかけても、相手方の担当者が支払いを忘れているなどの理由から、相手に売掛金を支払ってもらえていないままになっているケースも多いかと思います。

こちら側が何度支払いを催促しても相手方が支払いに応じない場合は、まず相手に督促状を出しましょう。きちんと請求したり督促状を出せば、期限付きの債権でない限りは相手方に債務を支払う義務が生じます。そうすれば、法律上「債務不履行」と呼ばれる状態となり、遅延損害金なども未払いの売掛金と併せて請求できるようになります。

督促をすれば時効がストップする

法律上、売掛金の時効は5年と定められているため、相手の支払いを待っているだけでは、5年で請求権が消滅してしまいます。しかし、督促状を出すことで時効の進行をストップさせる効果があります。正式に時効を中断させるには訴訟を起こすことが必要ですが、裁判外で請求するだけでも、6か月間時効を中断させることが可能です。

この6か月の起算日は、相手方に催告(請求書・督促状など)が届いた日であり、それを催告した側が証明しなくてはならないため、配達記録の残る方法を使って督促をします。

また、督促状を出すことで相手側が「支払いを待ってくれ」などと言ってくる可能性もあります。これも相手方が自ら債務があることを認めたこととなり、時効を中断させる効果があります。このとき、相手方と支払時期について協議し、「○月×日までに支払う」と取り決めができれば、合意書を取り交わしておくとよいでしょう。

督促状が無視されたら次は内容証明郵便

督促状を出したら相手から何か反応があるかと思ったが、効果はない。裁判で訴えたいところだが、訴訟を起こすにも時間とコストがかかる。そこで遂に、内容証明郵便を相手に送ってみることにした。

内容証明郵便とは、その名の通り、書面の内容を郵便局が公に証明してくれる手紙のことです。内容証明郵便自体に法的効力はありませんが、配達記録付きの内容証明郵便を出すことで、いつどのような内容の書面を郵送し、いつ相手方に届いたかが記録に残ります。

そのため、相手方は「そのような手紙は受け取っていない」と主張することはできなくなりますし、訴訟にまで発展したときには強力な証拠となります。

内容証明郵便の書き方

内容証明郵便には、ある程度決まった書き方がありますので、それに従って書いていきましょう。

①タイトル

何の請求書なのかがわかるように、「○○請求書」と記載します。

売掛金の請求であれば「売掛金請求書」となります。

②請求内容

売掛金の請求書の場合、いつ何を売ったときの代金を請求したいのかを記します。

③請求の根拠

「○月×日に請求書を送付したが、支払いがされていない」「○月×日に電話で、△月×日までに支払う約束をしたが、まだ支払われていない」などと、今回請求する根拠を述べます。

④支払方法

「本状到着後、×日以内に以下の銀行口座に振込」「○月末日までに現金で」など、どのような方法で支払ってもらいたいかを記載します。

⑤支払われない場合にこちらが取る手段

「期日までに支払いが確認できない場合は、法的措置をとる」というように、こちらが指定した期日までに支払いがなされない場合にどういう手段を取るかについても記しておきます。

内容証明郵便は心理的圧力をかけるためのツールになる

内容証明郵便は、通常の請求書とは違って、こちら側が本気でお金を支払ってもらいたいと考えていることを相手方にアピールすることになります。また、書面の中で法的措置も辞さない構えを見せることで、相手方に心理的な圧力をかける効果も期待できます。

もし、「内容証明郵便の書き方がわからない」「書面を準備する時間がとれない」という場合は、弁護士に相談して書いてもらいましょう。内容証明郵便の手配だけであれば、弁護士費用もそんなに高額にはなりません。また、弁護士名義で内容証明郵便を送ると、よりいっそうこちらの本気度が伝わることも、弁護士に依頼するメリットです。

内容証明郵便を使うときの注意点

内容証明郵便は相手方に圧力を与え、こちらが債権回収に本気であることを示すのに非常に有効なツールではありますが、使い方を誤れば逆効果になることもあります。内容証明郵便を使うときの注意点について見ていきましょう。

相手の性格・状況によって使うかどうかを決める

内容証明郵便はある意味相手に心理的圧力を加えるものなので、内容証明郵便を出すことで相手の心証を害してしまう可能性もあります。そのため、今後も円満な取引関係をずっと続けていきたいと思っている会社には内容証明郵便を使ってしまうと逆効果です。

また、経営危機に瀕しており、支払いをしたくても支払えずに困っているような誠実な会社には、内容証明郵便の利用は避けて、話し合いの場を設けて解決方法を探っていくほうが賢明です。このように、相手方の性格や態度、支払意思の有無によって内容証明郵便を利用するか否かを検討することが必要となるでしょう。

内容に間違いがないかどうかも確認しよう

内容証明郵便は、郵便局が内容を証明してくれるため、非常に証明力の高い書類であると言えます。その分、内容証明郵便は内容の正確さがかなり問われる書類となります。

そのため、事実関係をよく調べて確認した上で、書面にもれなく明確に記すことが非常に重要です。書面に書かれている内容があいまいだったり、不正確だったりすると、相手方に不信感を持たれたり、揚げ足を取られるおそれもあります。また、内容証明郵便は裁判になったときにも提出する書類なので、内容が不正確だと裁判官からこちら側の主張や根拠に疑いが持たれかねません。内容証明郵便で送る書類の内容の正確さには万全を期すようにしましょう。

配達証明付きの郵便にするのも忘れずに

また、配達証明記録付きの郵便にすることも非常に大切です。相手に書面が到達した日にちに請求の法的効力が発生するものなので、書面に十分な証明力・証拠力を持たせるためにも配達証明付きにすることを忘れないようにしましょう。

万一、郵便局から発送するときに「配達証明付きで」と申し出ることを忘れた場合でも、発送から1年以内であれば、配達証明を出してもらうことが可能です。その際、配達証明料として420円がかかることに留意しておきましょう。

結局、内容証明郵便を送ったところ、相手から振り込みがあった。無視されると思ったが、今回は効果があったようだ。訴訟にいたらなくて良かった。しかしこんなことは、こりごりだ。

こちら側が債権を持っている以上、その債権を回収すべく相手方に支払いを請求するのは正当な権利であると言えます。相手方に支払能力があるにも関わらず、支払ってもらえない場合は毅然とした態度で請求することが大切です。しかし、相手方が何らかの事情で支払えない場合は、柔軟な姿勢で相談に応じることも必要になってくるでしょう。

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