相続税の申告期限までに遺産分割が決まらないときのデメリット

相続税の申告期限までに、相続人との分割が確定しない……。故人が遺した遺言もなく、相続人の話し合いがまとまらないまま申告期限が来てしまったら、相続に際してどのようなデメリットがあるのでしょうか?

相続税の申告期限

相続税は、納税・申告義務がある場合、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内に、課税価格、相続税額等を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。例えば、6月14日に亡くなった場合は、翌年3月14日が相続税の申告書の提出期限になります。申告書の提出先は被相続人、つまり亡くなった人の住所地などの所轄税務署になります。相続する人が住むエリアの所轄税務署ではありませんので注意が必要です。

税務上のデメリット

さて、相続税の申告書作成の手続きを進めるとなると、申告期限までにやらなければならいことがいくつかあります。相続人の確定、財産・債務の評価等、遺産分割の協議、申告書の作成です。一般的には四十九日を過ぎて、落ち着いてから動き出すので、10ヵ月と言っても実質的に動ける期間は限定されます。

その限られた時間の中で行わなければならない最も重要な手続きが、遺産の分割です。これは、被相続人の遺産について「誰が」「どの財産を」引き継ぐかを決める手続きです。この遺産分割の協議が整っていない場合には、税務上認められている下記の主要な特例が、適用されてなくなってしまいます。

配偶者に対する相続税額の軽減

「配偶者控除」の適用が受けられません。配偶者控除とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、1億6千万円又は配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税がかからないという制度です。

一般的に、配偶者は被相続人と年齢が近いものです。近い将来、相続が発生する可能性は高いでしょう。一度、相続税が課税された財産を、残された配偶者が引継ぎ、それほど期間があかないうちに相続が発生するとなれば、同じ財産に対して2回もの課税がされてしまうこととなります。残された配偶者の生活を守るためにも、このような制度があるのです。

小規模宅地等の特例

小規模宅地などの特例とは、個人が、相続又は遺贈により取得した財産のうち、その相続開始の直前において被相続人などの事業に供されていた宅地など又は被相続人等の居住の用に供されていた宅地などのうち、一定の選択をしたもので限度面積までの部分については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合を減額する制度です。

これは、被相続人の宅地などが、一般に相続人などの生活基盤維持のために欠くことのできないものであり、この宅地などを売却して現金化することなどは想定しにくいことから、課税上も配慮を加えたものです。従って、減額の割合も80%と大きくなります。

話し合いで決定しなくても、申告をしておこう

遺産の分割協議がまとまらない状態で申告期限に近づいてきたとしても、慌てずに申告・納付はしておきましょう。もちろん、配偶者控除や小規模宅地などの特例の適用はされず、分割協議が整わない状況で申告書を提出するため、分割協議がなされた状態よりも多く税金を納めることになります。しかし、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して申告さえしていれば、例外規定として、相続税の申告期限から3年以内に分割された場合には、配偶者控除や小規模宅地などの特例の適用を受けることができます。つまり、申告をしておけば、将来、遺産の分割が確定したときに申告時に納付した相続税の還付を受けられるのです。

まとめ

相続人が多い場合や地方に点在している場合、遺産の分割で「相続」が「争族」になってしまうことがあります。10ヵ月以内に話し合いが決着せず「未分割」の状態でも、将来の相続税の還付を受けるために、申告・納付だけはしておきましょう。

文:松本恒(税理士)

参考:

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