相続税が払えない!「納税の猶予」という仕組みを知っていますか?

どうしても相続税額を納付することができない状況にあるとき、納税を待ってくれる制度があるのをご存じですか? 詳しい制度の概要について解説します。

納税を待ってくれる「納税の猶予」

納付する相続税額が多額で、即時納付が困難な場合は「延納」という分割払い制度があります。また、金銭納付が前提ですがお金がない場合には「物納」という制度も活用することができます。

でも、その制度を利用してもなお税金を納付することができない場合はどうなるのでしょうか?

延納や物納もできず、税金を納付することができない場合

相続税は原則として、死亡した人の財産を相続や遺贈によって取得した場合に、その取得した財産にかかります。相続税額が多額で延納や物納もできず、支払が困難な場合というと、下記のような状態が考えられますが、猶予は可能なのでしょうか?

ケース1

状況:
不動産の占める割合が多く、税額が多額となったが、換金可能な預貯金などの資産が少ない。延納もできず、物納条件も満たさないため物納もできず、納税が困難。

結論:
残念ながら納税の猶予はありません。銀行に納税資金の融資の申し込みをする必要が生じたり、相場よりも安く土地を売却せざるをえない……といったことも考えられます。

預貯金が少なくて不動産を多くもっている場合は、事前に相続税額の見積もりをして、物納予定地や売却予定地を整備したり、納税資金を貯めておいたりと、対策を施しておくことをお勧めします。

ケース2

状況:
相続税の申告期限内に被災などの理由から資産が消滅し、納付が困難

結論:
災害により財産の損失を受けた納税者に対しては、国税通則法46条に納税の猶予が定められています。要件を満たすと最大1年間の納税の猶予が可能です。大規模震災で特例法が制定された場合は、そちらに従います。

ケース3

状況:
都市部の農地で、広大地として評価額は高いが、換金できず、物納もできない

結論:
農業相続人が農地などを相続または贈与した場合に、納税の猶予の特例があります。

農業を営んでいた被相続人又は、特定貸付けを行っていた被相続人から一定の相続人が一定の農地などを相続や遺贈によって取得し、農業を営む場合又は特定貸付けを行う場合には、一定の要件の下にその取得した農地などの価額のうち農業投資価格による価額を超える部分に対応する相続税額は、その取得した農地などについて相続人が農業の継続又は特定貸付けを行っている場合に相続税の納税の猶予があります。(引用:No.4147 農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例|相続税|国税庁

この「農地等納税猶予税額」は、一定の場合に免除されます。なお、相続時精算課税に係る贈与によって取得した農地等は相続税の納税の猶予の特例の適用を受けることはできません。その他、相続税の申告手続き要件や納税の猶予期間中の継続届出などの申告要件がありますので、検討される方は国税庁のHPをご覧ください。

ケース4

状況:
非上場会社の株式の評価額が高いが、換金できず、物納もできない

結論:
オーナー会社などの非上場株式を相続または贈与した場合に納税の猶予の特例があります。事業承継税制などともいわれ、平成27年1月1日以後は要件が緩和されるなど改正がありました。

非上場株式も相続財産の対象ですが、一般的に換金性がありません。会社の業績が良いと評価額が高くなり、納税資金で困り、事業承継がうまくいかなくなってしまいます。そこで、一定の要件を満たし、一定の手続きをすることで、後継者が相続した非上場株式にかかる相続税額のうち80%の納税の猶予を受けることができます。ほかにも条件があるので、猶予を検討される方は国税庁のHPをご確認下さい。

まとめ

納税の猶予を受けるためには、条件がかなり細かく設定されています。「相続税が払えないから猶予してもらおう」と考えても、条件を満たさないと納税の猶予が受けられないので、事前に要件の確認を充分行うようにしてください。

文:添田裕美(税理士)

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