地方の変わった税金とは?

税金において最も中心的な役割を果たしているのは、国税です。法人税や消費税、所得税、相続税など主要な税目は国税に該当します。しかし、近年では各都道府県や市町村に納める地方税の役割が高まってきています。

地方税の役割が高まっている

地方分権という言葉が叫ばれるようになって随分と経ちます。ここ10年ほどで税制もさま変わりしました。ここでは、個人の所得(儲け)に課税される税金について考えてみましょう。個人の場合、国税ならば所得税が、地方税ならば住民税が該当します。

所得税では、累進課税というものが採用されています。これは、所得が上がれば税率も上がっていきますが、その最低税率は5%です。それに対して、住民税では10%の固定税率が採用されています。つまり、所得水準が低い状態においては、所得税率よりも住民税率のほうが高いことを意味しています。

以前は、住民税でも累進税率のようなものが採用されていました。しかし、平成19年から税率が10%固定に改められました。このときには、所得税率の引き下げが行われています。つまり「国税を減らして地方税を増やす」という政策がとられたのです。

地方自治と財源

上で紹介したような大きな流れは、全国的なものでした。財源として国から地方に移譲し、それぞれの自治体が自由に利用できるように推し進めたわけです。常に徹底されているとは言い難いですが、おおむねこのような流れにしたがって、近年の税制は構築されているといわれています(実際には疑問を抱かせるような改正も多いのですが)。

また、全国一律のものではなく、その地方のみで制定されている特殊な税金もあります。それが、「法定外目的税(ほうていがいもくてきぜい)」と呼ばれるものです。具体的にいくつか紹介してみましょう。

横浜みどり税

植林地や農地などの緑を保護すべく、個人・法人に課税する均等割(税金における基本使用料のようなものです)にいくらか上乗せをして徴収されています。

東京都の宿泊税

観光振興のための各種施策に利用するため、一定金額以上の料金で宿泊をした場合に、その宿泊者に対して課税されます。

産業廃棄物税

複数の都道府県で採用されています。産業廃棄物の処理について、重量あたりいくらという形で課税されています。
地方自治体が望む行政の方向に沿った形の独自税が、各所で制定されています。ただし、法定外目的税については問題点も指摘されています。

特定分野の狙い撃ち・課税権の濫用

法定外目的税は、少しうがった見方をすれば、特定の人たちを狙い撃つことにもなりまねません。例えば、山梨県河口湖町における「遊漁税」というものがあります。釣りをする人が増えたので環境整備のために課税する、というのが創設の理由です。

一見すると問題がないように思えますが、実際に整備された環境を利用するのは釣り人だけではないはずです。釣りをする人たちからすれば、「なんで私たちだけが税を負担しなければならないのか?」という気持ちになるのもわからなくはありません。

もう少し規模の大きなものでは、都心において「放置自転車の整備を目指して法定外目的税を創設し、鉄道会社に負担させよう」という話がありました。鉄道会社からすれば、「なんでウチだけが!」と非難したくなるのも当然でしょう。

税金は法律に基づき、公平に課されなければならない

最近では安保関係ですっかりと有名な憲法ですが、実は税務においても憲法はとても重要な意味を持っています。

  • 第三十条:国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。
  • 第八十四条:あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

憲法の条文をわざわざ2つも使って、法律に基づいて課税するよう念押ししています。それくらい課税権というものは慎重に取り扱おう、という精神がここに反映されているといわれています。

同様に、「税金は公平に課税されなければならない」という理念もあります。租税法律主義・租税公平主義と呼ばれる、日本の税制において最も根幹をなす大切な考え方です。

法定外目的税の濫用は、慎重に運用を求められている課税権について議論を呼ぶところでもあります。

まとめ

近年、地方自治の掛け声に押される形で地方税の役割が高まっています。税の割合において地方税が高まったり、特定の目的に特化した税金が地方自治体によって創設されたりする事例も増えてきました。さまざまな動きはありますが、安易な税の創設は租税行政全体の安定性を崩すことにもなり、慎重な議論が求められます。

文:高橋昌也(税理士)

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