外国人配偶者が相続した遺産も、日本の相続税の対象なの?

国際結婚が珍しくなくなってきました。そうなると必然的に気になるのは、相続の問題です。長年連れ添った夫婦が死別した場合、遺産に対して相続税はどのように課税されるのでしょうか?

配偶者控除ってなに?

まず、相続税における配偶者の特例を確認しておきましょう。配偶者控除と呼ばれる制度です。簡単にまとめると、配偶者が相続する遺産については、以下のような特例が用意されているのです。

  • 1億6,000万円までは相続税がかかりません。
  • 配偶者の法定相続分までは相続税がかかりません。

少し難しいのは、2番目のお話です。ここでいう配偶者の法定相続分とは、「民法で考える妥当と思われる相続分」のことです。

例えば、子どもがいる夫婦の場合、配偶者の法定相続分は2分の1と規定されています。遺産総額が5億円の場合、配偶者の法定相続分は2億5,000万円になります。つまり配偶者が相続する限りにおいては、2億5,000万円分までは相続税が課税されないことになります。

ここで注意をしたいのは遺産分割です。配偶者控除は、遺産分割がきちんと完了している遺産にしか適用されません。遺族が分割協議で揉めてしまい、遺産分割が済んでいないと、配偶者控除の適用が受けられないことになってしまいます。あとから摘要を受ける手立てがないわけではありませんが、やはり遺族が揉めないように生前から対策をしておくことは大切です。

外国人の相続税は?

次に、外国人に対する相続税について考えてみましょう。

実は日本人であるか、外国人であるかの前に確認をしなければならないことがあります。それは相続により遺産を受け取った時点で、その取得した人が日本国内に住所を有しているか否かという点です。

日本国内に住んでいるならすべてが課税対象

簡単にいえば、遺産をもらった時点で日本国内に住所を有している人は、すべての財産について相続税が課税されます。日本人であろうと、日本に在住している外国人であろうと、ルールは変わりません。日本人と外国人の夫婦が日本国内で生活している場合には、どちらが先に亡くなろうとも、相続税の課税対象になるのです。

日本国内に住んでいない場合には複雑

では、夫婦が日本国内に住んでいない場合にはどうなるのでしょうか? こうなると、判断が突然難しくなります。

財産をもらった人が日本人であり、さらに亡くなった人か財産をもらった人が死亡の日5年以内に日本国内に住所を有していたことがある場合
この場合には、すべての遺産に対して相続税が課税されます。遺産をもらう人が日本人である場合、日本との縁が強いということも踏まえて、死亡日から一定の期間まで遡って課税をする姿勢が伺えます。

財産をもらった人が外国人であり、さらに亡くなった人が死亡の日に日本国内に住所を有していた場合
この場合にも、すべての遺産に対して相続税が課税されます。遺産をもらう人が外国人である場合、日本人がもらう場合よりは、少し狭めに課税しようとしていることがわかります。

上の2つの事例に該当しない場合
この場合には、取得した遺産のうち日本国内に存在するものに対してのみ相続税が課税されます。ここまで日本との関係が薄れている状態ならば、日本国外の遺産に関してまでは課税をしません、ということです。

話が少し複雑になっていますが、まず大切なのは住所がどこにあるのか、というお話です。そもそも日本国内に住んでいるのならば、日本人であろうと、外国人であろうと、すべての遺産に対して相続税が課税されます。日本に住所がない場合、そこで初めて日本人か外国人かが問題となります。

どんな生活を望むのか?

少し具体的に考えてみると、問題が身近になるかもしれません。

いずれは夫婦で母国に…

外国人配偶者の母国で夫婦そろって生活することを考えている場合には、考え方は大分シンプルになります。5年以上にわたって日本から離れて生活をすることになれば、相続税の課税は日本国内に存在する遺産だけに限定されます。遺された側の配偶者が外国人であれば、5年という期間も考える必要がありません。

夫婦で別居状態となると…

とても面倒なことになります。日本人配偶者が国内に残っているならば、世界中に存在する遺産が課税対象となります。これは、外国人配偶者が外国で居住している日本人配偶者所有の不動産も相続税の課税対象となる、ということです。外国人配偶者からすれば、「なんで私が住んでいるだけなのに、日本の相続税が課税されるの?」と不満を抱くのではないでしょうか?

また、国籍や住所がどのような組み合わせであっても、「日本国内に所有していた遺産については、すべて課税対象となる」ということも忘れがちです。海外に住んでいる外国人配偶者が、日本に所在する遺産について相続税を支払え……と言われても、困惑してしまうのではないかと思います。

ライフプランはしっかりと

日本人夫婦に比べて生活の流動性が高そうな国際結婚カップルの場合、ライフプランについては慎重に考える必要があります。例えば「そもそも不動産などの所有物を増やさない」「夫婦それぞれの財産について、生前から管理をしっかりと分けておく」といった対策を練っておくほうがよいのかもしれません。配偶者控除の活用も含めて、生前の準備がとても大切です。

まとめ

相続税には配偶者控除があり、配偶者はかなり優遇されています。ただし、国際結婚の場合、外国人に対してどのように相続税が課税されるかはいろいろなケースがあります。日本国内の住所有無、遺された配偶者の国籍などさまざまな要素が関わってきます。配偶者控除を使うことも含めて、生前から希望のライフプランを練り込み、それに併せて財産を形成していくことが大切です。

文:高橋昌也(税理士)

参考:

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