EU等で導入されている付加価値税ってなに?

ついに日本国内でも、消費税の多段階税率が運用されることになりました。ところで、海外旅行に行くと、レシート等に「VAT20%」と印字されています。これは、いわゆる付加価値税と呼ばれるものですが、日本の消費税とは何が異なるのでしょうか?

付加価値税≒消費税?

ここで財務省のホームページを見てみると、このような記載があります。

  • 日本の消費税は、他の国では付加価値税と呼ばれるものです。
  • 現在、OECD加盟国34ヶ国中、アメリカを除く全ての国に付加価値税があります。

というわけで、いきなり答えは出てしまいました。付加価値税と消費税は同じものですよ、と国の機関が明言しています。基本的に付加価値税と消費税は同じものと考えて構いません。

ただ、確かに付加価値税と消費税とでは、考え方に少し違いがあるのは事実です。まず考えなければならないのは、「付加価値」という言葉の意味です。

付加価値とは何か?

付加価値という言葉、日常ではそれほど使うものではありません。会計や経理の世界をベースにして、付加価値という言葉を考えてみましょう。

商売とは付加価値を重ねていくこと

例として、私たちが日常的に食べている食品を考えてみましょう。

  • 農家Aが材料を生産し、商社Bに20で販売した。
  • 商社Bが20で仕入れた材料を35で食品メーカーCに販売した。
  • 食品メーカーCは35で仕入れた材料を使って食品を作り、60でスーパーDに販売した。
  • スーパーDは60で仕入れた食品を消費者Eに100で販売した。

商売というのは、このように各人が付加価値を重ねていくことで成立しています。そして、付加価値税は、こうして高まっていく商品やサービスの価値増加分に対して課税されるのです。

付加価値税の計算方法

仮に付加価値税率を20%に固定して考えると、先ほどの例では次のように計算をします。

  • 農家A:材料20✕20%=4が付加価値税
  • 商社B:(材料35-仕入値20)✕20%=3が付加価値税
  • 食品メーカーC:(食品60-仕入値35)✕20%=5が付加価値税
  • スーパーD:(商品100-仕入値60)✕20%=8が付加価値税
  • A~Dまでが負担した付加価値税の合計額:20

付加価値税の基本は、「自分が生み出した付加価値に対して課税されること」です。つまり、より多くの付加価値を生み出した人が、より多くの税金を負担することになります。このような課税の仕組みのことを「多段階課税」と呼びます。

消費者側から考えると…

先ほどの例ですが、消費者EがスーパーDから食品を購入するときには、100だけではなく20の付加価値税を負担することになります。言葉を言い換えるなら「100の消費をするために20の税金を負担する」ということです。

つまり、付加価値税と消費税とは言葉の違いでしかない、ともいえます。「生み出される価値に税金を課す」と考えるか、「消費に対して税金を課する」と考えるのか、という違いです。このように、実際の運用方法については、ほとんど違いはないと考えてよいということです。

多段階税率の有無が区別の理由だった

実務的には、付加価値税と消費税の違いとして、多段階税率のことを言及することが多いようです。日本国内では軽減税率という言葉がよく用いられていますが、用いる税率が複数になるということで、多段階税率という言葉のほうが実態に近いかと思います。

単一税率と多段階税率の違い

上の例でいえば、自分が行っている商売がどんな種類のものであろうと、税金の額は変わりませんでした。しかし多段階税率においては、「自分の商売に用いられる税率はいくつなんだろう?」ということを把握していなければなりません。さらには、「自分より前の行程では、どんな税率が適用されていたのだろう?」ということまで把握しなければなりません。単一税率と比べると、多段階税率は税金を計算するための手間が非常に複雑なのです。

そこで用いられるのがインボイスと呼ばれるものです。簡単にいうと、「自分の手元に来るまでに、誰がどんな手を加えて、どれくらいの付加価値税を負担してきたのか」ということが記録されている資料です。インボイスは、自分が負担すべき付加価値税を計算するための仕組みとして、海外で用いられています。

これからの消費税

課税対象として、消費税はこれからその重要度が確実に高まってきます。多段階税率の採用が決まり、インボイスのような資料導入も近い将来に始まるようです。海外における付加価値税は、インボイスの採用により明瞭性がかなり保たれているといわれていますが、日本国内でもそういった方向に動くことが予想されます。

まとめ

付加価値税とは、日本でいう消費税のことです。事業者が生み出す価値に着目するか、購入等による消費に注目するのかという定義の違いがその差です。日本でも多段階税率の採用が決まり、インボイスの導入も近い将来に予定されていることから、実務的には、多段階税率やインボイスといった制度上の差異を含めて話をしていることが多くみられます。

文:高橋昌也(税理士)

参考:よくあるご質問|副大臣がお答えします|諸外国での消費税の位置づけ | 財務省

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