1000坪の土地、生前贈与?それとも相続?

先祖代々受け継いできた1000坪の土地(山林)を、そのまま子どもに譲りたいと思っています。生前贈与にすべきか、それとも相続でいいのか、どちらがいいのでしょうか?

生前贈与にした場合
先祖伝来の資産を子どもにも受け継いでほしい。とても自然な感情です。しかし、税金のことが心配ですよね。いずれは相続が起こるとはいえ、先に生前贈与しておいたほうがいいのか、悩ましいところです。

これは、相続税と贈与税の仕組みの違いにあります。贈与税の基礎控除額は110万円と小さく、累進税率もかなりの急カーブで、通常、相続税よりも高税率です。しかし、相続と異なり、贈与は時期を選べるので、計画的に準備して、引き継いでほしい人に譲ることができます。また、相続時精算課税制度という、贈与税を繰り延べる仕組みもあります。

今回は単純比較するために、基本的な暦年課税で計算してみます。例えば、評価額600万円の土地(山林)を単年で贈与したとします。単純に計算すると、(600万円-110万円)×20%-30万円=68万円となるので、税負担は11.3%になりますね(20歳以上の子、孫が親または祖父母からの贈与により財産を取得した場合の特例税率で計算)。

相続にした場合

相続の場合、税金のかからない範囲は、法定相続人の数により変わります。基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人の数ですので、贈与税の基礎控除額よりもかなり大きくなります。

もし相続財産が、評価額600万円の土地(山林)だけでしたら、基礎控除額以下で相続税はかかりません。したがって、生前贈与よりも相続のほうがお得ということになります。

難しいのは、この土地以外にも相続財産がそれなりにある場合です。それは、相続財産が多いほど、適用される税率も高くなるからです。そうすると、先に土地(山林)だけを贈与した場合の贈与税率よりも、相続税率のほうが高い税率となる可能性もありえます。

土地(山林)も含めて、相続財産が全部で12,000万円と24,000万円のケースで試算してみましょう。ここでは仮に、法定相続人を子ども3人とします。

12,000万円の場合は、基礎控除額4,800万円を引いて税率を掛けると、3人分の相続税額は合計930万円となります。税額の課税財産に対する割合、つまり税負担は7.7%です。

ところが、財産総額が24,000万円だとしたら、相続税額は合計3,660万円で税負担は15.2%となり、先ほどの贈与税の11.3%より負担が大きくなります。それならば、贈与税のほうがお得になりますね。ということは、生前贈与を検討する余地があるということです。

これはあくまで単純な試算です。相続税は誰が何をもらうかで税額が大きく変わってきますので、詳細なシミュレーションは税理士などの専門家にご相談ください。しかし、それ以前に、ご家族での話し合いをお勧めします。数字を先に見ると、それに引きずられて、本当はどうしたいのかがぼやけてしまいがちだからです。

まとめ

生前贈与と相続のどちらが得か、これは税額の問題だけでしたら、それほど難しい話ではありません。総資産と土地(山林)の評価額を見比べて、試算した税金の少ない方法を採ればいいからです。ただし、山林を受け継いだ子どもに所有の意思があり、固定資産税等の負担を承知していることが必要です。

事業を続けるための土地、住むための土地には軽減制度がありますが、山林にはまず該当しません。しかも、手入れの行き届いた山林、形状のよい山林などでなければ、山林の資産価値はあまり高くない場合が多いですし、いずれ売却と思っていても、山林の買い手が簡単に見つかるとは限りません。宅地と違い、山林や農地は相続財産としては悩ましいといえます。

一方、地方の見直しが進み、Uターン、Iターン、地方移住など、シニア層だけでなく、若い世代にも地方回帰がみられます。将来、先祖伝来の土地や山林が、子ども、孫世代の生活を豊かにする貴重な資源となるかもしれません。

税制としては、世代間の資産移転を促進する方向に進んでいます。若い世代に早く財産を渡して、有効に使ってもらい経済の活性化につながることが期待されているわけです。親も、子どもも、大切な土地をどうすべきか、生前贈与や相続の仕組みを理解し、よく考えていきたいものです。

文:川﨑由紀子(税理士)

参考:パンフレット「暮らしの税情報」(平成27年度版)|不動産と税|財産をもらったとき|国税庁(PDF)

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