出国時に譲渡所得が課税される「出国税」って?

パナマ文書などをきっかけとして、租税回避に関する話題がよく報道されています。実はそんな流れにあわせて、日本でも租税回避を防止するような税制改正が平成27年度に行われました。それが「国外転出時課税」、いわゆる出国税です。

株式等の譲渡に関する課税の原則

株式等の譲渡については、基本的に居住している国で納税をするのが国際的なルールとなっています。これを利用して、次のような租税回避を行う事例がありました。

  1. 日本国内において出資・株式等の購入を行う

自分で出資をして会社を興した場合なども含めて、株式等を取得します。

  1. 株式などの価値が上がってきたら、日本から海外に住所を移す

設立した会社の事業が成長していけば、必然的に株式の価値も上がっていきます。もし上場でもしようものならば、最初の出資額が数千倍、数万倍になることだって夢ではありません。IPO(新規上場)において創業者利益と呼ばれるものです。そのまま日本国内で株式を譲渡すれば、その利益に課税されます。そこで、住所を日本国内から海外に移してしまいます。移す先は株式などの譲渡に対する税金が安い、またはそもそもないような国です。

  1. 住所を移した後に株式などを売却する

繰り返しになりますが、居住している国において課税されるのが国際的なルールです。したがって、このケースでも居住している国で税金を納めれば、ルール上問題はありません。しかし「日本国内で活動し、日本国内で価値の上がった株式を、国外で売却することによって税金逃れをする」というのは、道義的に考えると非常に問題があるのではないでしょうか?

このような租税回避行為を防止するために、以下のようなルールができました。

出国税は、出国時点で譲渡したものとみなす!

国外に住所を移す時点において、1億円以上の株式等(ほかにもいろいろな金融商品が該当します)を保有している場合には、その出国時点において譲渡があったものとみなす、という改正が平成27年7月に行われました。

みなす=税務上、事実として取り扱う

ここで「みなす」という言葉について注意が必要です。これは非常に強力な言葉で、みなすというのは税務上事実として起こったものとして取り扱う、ということを意味します。つまりこのルールでいえば、国外に転出する時点で「譲渡した」ということになり、基本的には例外なく対処する、ということを意味しています。

出国税は未実現利益に対する課税である

このルールで面白いのは、実際にはまだ実現していない利益に対する課税である、という点です。本来、課税というのは実現した利益に対して行われるものです。株式などであれば、売却がすんでお金が手元に入ってきてから課税されるのが本来の姿です。

しかし、このルールでは実際の売却がすんでおらず、まだ実現をしていない含み益に対して課税を行うことになります。これまでの課税よりも一歩踏み込んだ、より強力な課税権の行使といえるでしょう。

これは世界各国に共通する傾向ですが、富裕層の利益というのは実際に働いて稼ぐというよりも、株式などへの出資や配当などの金融商品により獲得されています。そういった観点からも、今回の改正は行われました。

出国税は贈与や相続で適用されることもある

出国税は、本人が国外転出をしていなくても適用されることがあります。贈与や相続、遺贈によって対象となる株式などが国外居住者に移転した場合にも適用されるのです。高額の株式などを保有している人は、意図せず海外へ財産が移転するようなことがある場合には、よく注意をしておかなければなりません。規定の適用に当たっては日本での居住期間などが問題となることもあり、前提となる条件をよく確認しておくことも必要です。

ただ、一時的な出国で国外において株式などの売却を予定しているわけではないような場合には、担保などを提供することによって納税猶予を受けることも可能です。国外への転居を予定している場合には、自分の保有財産について確認をするようにしておきましょう。

まとめ

租税回避行為のひとつに、住所を国外に移してそこで株式などの売却を行う、というものがあります。それを防止するために、出国時において譲渡したものとして課税をする制度が始まりました。それが国外転出時課税(出国税)です。出国税は転居だけでなく、贈与などにより株式などが国外に移転する場合にも該当するので、注意してください。

文:高橋昌也(税理士)

参考:

  • No.1478 国外転出をする場合の譲渡所得等の特例|国税庁

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