節税対策で、「社長さん」にボーナスを支払いたい!

思ったよりも黒字が出そうなので、社長さんにボーナスを出したい。そんなことを考える経営者は決して少なくありません。しかし、その実現には超えなければならない壁があることを知っておく必要があります。

社長さんの給料(役員報酬)には制限が多い

まず大前提として、中小企業の社長さんに支払われる給料(役員報酬)には制限が多いことを知っておく必要があります。まず、そもそも役員がもらっているのは給料ではありません。社長さんというのは役員です。役員と会社の間で結ばれているのは、雇用契約ではなく委任契約なので役員報酬となるのです。簡単にいうと「経営のプロとして会社を任されている人」ということです。労働の対価というわけではなく、作業量や業績で金額が左右するような性質のものとは言い難いのです。

ただし、俗称として「社長さんの給料」といわれていますし、税務上は給料として課税されます。ですので、以下の文章でも「社長さんの給料」と表記します。

委任契約ですから、社長さんの給料は基本的には毎月決まった金額となります(「定期同額給与」といわれる仕組みです)。つまり、社長さんは1年間を通じて、決まった金額の給料をもらい続ける必要があります。そうでないと、個人では給料として課税されますが、法人側では経費として認めてもらえなくなってしまうのです(実際には金額を変動できる時期など、いろいろと条件があります)。

社長さんのお給料が固定されているのは、これだけが理由ではありません。実務上では、「利益操作をさせない」という重要な意味があります。もし、社長さんのお給料に対して、何の制限もないとしたらどうなるでしょうか?

おそらく会社に儲けが出ればたくさん支払い、そうでなければ減額をして……といった調整を毎月のようにするのではないでしょうか? そうやって好きに金額を操作できれば、会社と社長さん個人を合わせて最も税金が少なくなりそうなところを狙うことができます。そういった恣意的な操作ができないように、社長さんの給料には制限がかかっているのです。

社長さんのボーナスのような「事前確定届出給与」

では、社長さんにはボーナスがまったく支払えないのかというと、そういうわけでもありません。ボーナスに似たものとして「事前確定届出給与」という仕組みがあります。読んで字のごとく「事前に確定させておくことで支払う給与」です。

まず、社長さんの給料に対する制限を意識し、そのうえで事前確定届出給与について確認していきましょう。なお、利益連動給与という仕組みもありますが、これは同族会社ではない場合のみに使える仕組みです。多くの中小零細企業は同族会社なので、今回は説明を省きます。

事前に確定とありますが、ただ単にあらかじめ決めておけばよい、というものではありません。なんとこの規定、税務署への届け出が必要です。支払う時期やその金額について、税務署に知らせておかなければならないのです。

届ける時期も決まっています

「株主総会の決議日から1ヶ月以内」「決算から4ヶ月以内」のうち、早い方の日が届け出の期限です。つまり、その事業年度が始まってから比較的早い段階までに届け出をしなければならないことになっています。所定の様式に必要事項(支払い時期・金額など)を記載して税務署に届けておくことで、事前確定届出給与を支払うことができるようになります。

これでボーナスが支払えて……いるのか?

事前確定届出給与の手続きをしたことで、定められた時期に毎月の給料とは違ったものを受け取ることができます。決算期末のころに時期を設定すれば、まさに決算ボーナスのような意味合いになるでしょう。

しかし、少し冷静になって考えてみると、これはそもそも皆さんが支払いたいと思っているようなボーナスに該当するのでしょうか? そもそもやりたかったのは「会社に黒字が残りそうだからボーナスを支払いたい」ということだったはずです。

しかし、クドいようですが、事前確定届出給与では支払う金額を事前に確定させなければなりません。そもそもいくら黒字になるのかがわからないのですから、「もし儲けが出たらボーナスで払いたい」と考えていた目的からすると、趣旨がまったく変わってしまっています。

そして、この事前確定届出給与、なんと金額の変更は増額も減額も一切認められていません。事前に届け出た時期、金額と少しでもズレが出てしまうと、支払額は経費に入れることができなくなってしまいます。

強いていえば、とりあえず支払っておいて、もし調子が悪ければ支払わないでおくという使い方はあるかもしれません。しかし、それでも金額は固定されており、やはり「調子がよいからボーナスを支払いたい」という趣旨には合致していません。

そもそも社長さんにボーナスを払うと節税になるのか?

近年では、個人に対する課税が強化されるとともに法人に対する減税傾向が顕著です。これはどういうことかといえば、社長さん個人にボーナスの形で給料を支払うことが節税につながるとは限らないということです。場合によっては、素直に法人税を支払ったほうがお得であることも珍しくありません。社長さんに対する給料は毎月の金額で調整し、その設定額を1年ごとに様子を見ながら検討をするというのが実務的にはよくある話です。

まとめ

社長さんの給料には多くの制限があります。基本は毎月決まった金額を計上することですが、ボーナスと同じような扱いにできる事前確定届出給与という仕組みもあります。ただし、事前確定届出給与では、事前に税務署へ金額と支給時期を届ける必要があります。しかも、事前の届け出と実際の支払いが異なってしまうと経費に参入できません。場合によっては、法人で税金を負担したほうが節税になることもあるので、無理して個人にお金を引っ張ってくることは考えないほうがよいことも多々あります。

文:高橋昌也(税理士)

参考:

  • 国税庁|税について調べる|タックスアンサー|法人税|役員報酬・役員賞与など|No.5209 役員に対する給与
  • 国税庁|申告・納税手続|税務手続の案内|法人税|[手続名]事前確定届出給与に関する届出

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