賃貸住宅の相続税、生前贈与のほうが節税になる?

両親が10年前に3,000万円で建てた賃貸住宅を相続することになっています。家賃収入がある不動産の場合、生前贈与のほうが節税になるそうですが……。

家賃収入がある不動産の評価

相続対策で賃貸住宅の建築がおすすめ、なんて聞いたことがあるでしょう。ほかに財産の形はいろいろあるのに、なぜ賃貸物件がよいのでしょうか。それは、相続税の財産評価の方法に理由があります。

賃貸建物の場合、固定資産税評価額に借家権割合と賃貸割合を乗じた価額を引いて評価します。例えば、賃貸住宅建物の固定資産税評価額を1,000とした場合、満室の状態なら1,000-1,000×30%×100%=700で、財産評価額は700となります(借家権割合は30%とします)。ですから、約3割の評価減になるのです。

建物の敷地の場合は、貸家建付地として評価します。土地の基準は路線価です。こちらは、自用地とした場合の価額に借地権割合と借家権割合、さらに賃貸割合を乗じた価額を引いて評価します。ちょっと面倒ですね。例えば、路線価1,000、借地権割合を70%とします。満室の状態なら1,000-1,000×70%×30%×100%=790で、評価額は790となり、約2割の評価減になります。さらに敷地は、小規模宅地等の特例を使えば、50%減額もありえますね。

財産評価がこれほど低いのは、換金性が低いからです。入居者のいる建物は、簡単に処分することができません。

賃貸住宅の生前贈与で相続税を節税

評価額が低くなるならば別に生前贈与しなくても、ほかの財産をもらっておけば、と思うかもしれません。ところが、賃貸住宅は収益物件であるところがポイントです。これは、家賃収入が発生するものという意味です。継続的に収入があるということは、毎年ある程度ずつ現金が残るということです。

仮に親が持ったままならば、相続税のかかる相続財産が少しずつ増えていきますが、生前贈与すれば、それ以降の収入は子どものもの。若干の所得税の負担は発生しますが、残った利益は、将来の相続税の納税資金として貯めておくことができます。

このように、家賃収入というキャッシュを生み出す賃貸住宅を生前贈与することは、相続財産を減らす節税効果があり、かつ相続人の手元に現金を残すという納税資金対策にもなるのです。

賃貸住宅の生前贈与における注意点

贈与の場合、当然贈与税の心配があります。自分が住むための住宅でなければ、特例もありません。暦年課税と相続時精算課税の選択も視野に入れ、一度シミュレーションしてみるとよいでしょう。

また、登記などの諸費用の負担も見込まれますし、所有している限り、毎年固定資産税も払わなくてはなりません。不動産オーナーとして、不動産所得の確定申告も必要となります。

なお、小規模宅地等の特例を受ける可能性があれば、建物のみ生前贈与して、敷地は相続財産として小規模宅地等の特例を適用する可能性を残すのも1つの方法です。

まとめ

相続税の節税対策は、大きく2つの考え方ができます。1つは資産の組み換えや非課税枠の活用などの相続税額を抑える方法。もう1つは生前贈与を利用する方法です。

賃貸住宅の生前贈与は、この2つの考え方を最も有効に生かしたものといえます。ただし、節税効果ばかりに目がいって、不動産経営を安易に始めるのも問題です。思うように収益が上がらず、コストと気苦労ばかりを背負い込んでは本末転倒です。そのようなことになるのでしたら、多少割高な相続税を払っても、現金をもらったほうがよほど幸せです。

生前贈与は時期を選べます。よいタイミングで適切な資産を贈与できるよう、しっかりと検討しましょう。

文:川﨑由紀子(税理士)

参考:

  • 国税庁|税について調べる|タックスアンサー|財産の評価|相続財産や贈与財産の評価|No.4602 土地家屋の評価|アパート等の貸家の評価
  • 国税庁|税について調べる|タックスアンサー|財産の評価|相続財産や贈与財産の評価|No.4614 貸家建付地の評価

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