譲渡所得の税率と計算方法を教えてください

離婚の際、夫名義の土地と建物を財産分与として妻に渡すと夫に譲渡所得がかかるそうですが、その税率と計算方法を教えてください。

譲渡所得とは何か

譲渡所得を説明する前に、所得税について簡単に説明しましょう。所得税は、個人が1年間の所得に応じて負担する税金のことです。この所得税は10種類に区分されます。10種類のうちよく聞くものとしては、給与所得、事業所得などですね。譲渡所得も、この10種類のうちの1つです。

「譲渡所得」は、財産を売って得た所得のことです。財産の種類や、所有していた期間によって、その計算方法は異なります。そして、土地や建物を売った譲渡所得は、ほかの所得とは分離され、特別の税率で課税されます。なお、所有期間が長期か短期かにより税率が異なりますので、注意が必要です。

譲渡所得の税率と計算方法

譲渡所得の計算方法

譲渡所得は、次の式で計算します。

譲渡所得=譲渡収入-(取得費+譲渡費用)

  • 譲渡収入とは、土地や建物の譲渡価額、つまり売った代金のことです。
  • 取得費とは、土地建物の購入代金のほか、購入手数料、登記費用などの取得に要した費用です。建物の場合は、期間に応じた減価償却費を差し引きます。不明なときは、譲渡価額の5%とすることもできます。
  • 譲渡費用とは、土地や建物を売るために支出した仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代などです。

長期・短期の区分と税率

土地や建物を売ったときの譲渡所得は、所有期間によって長期と短期に区分し、税金の計算も別々に行います。長期と短期は5年を基準に分けますが、満5年ではありません。取得した日の翌日から、譲渡した年の1月1日の所有期間が5年を超えるものは長期譲渡所得、5年以下のものは短期譲渡所得となります。

税率は、課税長期譲渡所得金額に対し、所得税15.315%+住民税5%=20.315%です。課税短期譲渡所得金額に対しては、所得税30.63%+住民税9%=39.63%です。ずいぶん違いますよね。

財産分与と税金の取り扱い

離婚に伴う財産分与の場合、もらったほうにかかるとすれば贈与税ですが、常識的な範囲内であればまず税金はかかりません。一方、渡すほうは、所得税が課税される可能性があります。

これは、財産の分与は時価が譲渡収入となるからです。そのため、取得費と譲渡費用の合計より時価が大きい場合(値上がり益がある場合)には、その値上がり益相当に課税されるのです。

ところで、マイホーム(居住用財産)の譲渡には、一定の要件を満たせば、最高3,000万円まで控除できる特例があります。したがって、譲渡益が発生したとしても、この特例が使えれば、それほど心配することはありません。

ただし1点だけ注意することがあります。それは、この特例が親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売った場合には適用されないことです。しかし、離婚が成立したあとは他人ですから、適用されます。

つまり、居住用財産の3,000万円について特別控除の特例を使うには、マイホームの譲渡を離婚成立後にする必要があるということです。微妙なタイミングの差ではありますが、使える制度は有効に使いたいものです。

まとめ

離婚に伴う財産分与で、住んでいた土地や家を譲渡した場合、現金収入がないのに税金だけかかるなんて納得できない、と感じられるかもしれません。しかし、法律的な解釈では、財産分与により分与義務の消滅という経済的利益を享受することになります。ですから、その経済的利益は課税対象となるのです。なんだか難しい話ですよね。でも簡単にいえば、離婚で財産を渡して、さらに税金がかかる場合もあるということです。

離婚の際に取り決めることはたくさんありますが、マイホームの財産分与は譲渡所得の可能性があることを念頭に置いて、冷静に考えられるとよいですね。

文:川﨑由紀子(税理士)

参考:

国税庁|税について調べる|タックスアンサー|譲渡所得|譲渡所得のあらまし|No.3114 離婚して土地建物などを渡したとき

国税庁|税について調べる|タックスアンサー|譲渡所得|マイホームを売ったとき|No.3302 マイホームを売ったときの特例

関連記事