売掛金が回収不能に!貸倒損失は?貸倒引当金って何?

事業経営においてとても大切な売掛金の管理。これを怠ると「売り上げたのに代金がもらえない!」なんてことになりかねません。ですが、残念なことにどれだけ丁寧に管理をしていても、代金の未回収は起こってしまいます。代金が未回収になってしまったとき、経理・税務的にはどのような処理が行われるのでしょうか?

「倒産」という言葉には、いろいろな意味がある

事業を続けていると、「倒産」「廃業」「潰れた」「閉店」といった言葉を普通に使うことがあります。これらの言葉は、おおむね「商売をやめたらしい」という意味合いで使われています。

単なる噂話であれば、それでも問題はありません。しかし、それが取引先で、まだ売掛金や受取手形などの債権が残っている場合には、その言葉を正しく解釈する必要があります。なぜならば、すでに計上した売掛債権について、貸倒損失(費用の計上)ができるかどうかを検討しなければならないからです。

取引先となんとなく連絡が取れなくなってしまう場合

困ったことに、中小企業では珍しい話ではありません。電話をしても出ない、メールを送っても返信がこない、郵送物にも反応がない。会社としてきちんと事務所なり営業所なりを構えている取引先であればまだしも、自宅やレンタルオフィスなどで仕事をしているような個人やSOHOでは、気がついたら引っ越しをしていたりして音信不通になってしまうこともありえます(いわゆる夜逃げもこの部類に入ります)。

この場合、取引先は「潰れた」と考えるのが一般的です。しかし法律や会計的に考えると、この時点ではまだ取引先に対する売掛債権は有効です。言い換えると、「取引先とは単に連絡が取れないだけ」という状態です。

法律的な手続きを踏んだ、あるいは債権者集会などが開催された場合

会社更生法や民事再生法、破産法といった法律的な手続きを取引先がきちんと踏んだ場合、そこには客観的な事実に法律的な根拠が加わることになります。法律の規定に基づいて売掛債権が切り捨てられた場合には、貸倒損失を計上することになります。

また、法律には基づかないまでも、債権者集会や関係者による協議の場で「あなたの売掛金は諦めてください」と伝達され、それをこちらが受諾したとします。あるいは、取引先に対して「もういりません」と書面で伝達したとします。この場合には、明らかに「私はもう売掛金の回収は諦めました」と対外的に認めたわけですから、これも貸倒損失の計上対象です。

法人税の取扱規定等によれば、「全額が回収不能であることが明らか」である場合には、貸倒損失を計上してもよいことになっています。しかし、税の実務においては、その時点での貸倒損失計上はあまりオススメできません。それは、税務調査によって「これはまだ貸し倒れとは認められない」と指摘されてしまう可能性があるからです。

ですが、それでは取引先が夜逃げや海外逃亡などで所在不明になってしまったら打つ手がないように思えます。とはいえ、まったく打つ手がないわけでもありません。取引先の支払能力が明らかに不足しており、かつ一定期間取引が停止した、または弁済が滞っているような場合には、備忘価額(取引があったことを残すためのもの)を残して、残額を貸倒損失として計上します。

貸倒引当金とは何か?

上記のように、貸倒損失の計上には意外と厳しい条件が課されています。ただし、実際に事業を継続しているなかでは、「貸倒損失の状態までには至らないけれど、多分回収できないのではないか」といった債権が出てきます。また、何の予兆もなく、突然取引先が倒産することも起こりえます。

そういった将来起こる可能性のある損失に対して、事前に計上をしておくのが「貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)」です。これは、まだ起こっていない損失に対してあらかじめ準備をしておくという、現行会計における非常に特徴的な仕組みです。

貸倒引当金には、「一括評価のもの」と「個別評価のもの」の2種類が存在します。

一括評価のもの

取引先について、特別な事象や予兆がない普通の売掛債権でも、突発的に回収不能になることは起こりえます。こういった普通の売掛債権については、「全体のうち多分これくらいの貸し倒れが生じるのではないか」という概算数字を利用して計上します。その概算数字については、過去3年間の貸し倒れ実績から求めることになっています。また、実績率ではなく法定繰入率を使用することも認められています(業種により3/1000~13/1000まで設定されています)。

個別評価のもの

取引先の支払能力が明らかに不足しており弁済が滞っている、あるいは会社更生法、民事再生法などの法的手続きを開始した、法的手続きが進んでいるというように明確な事象が生じているような売掛債権については、やはりその事情によりそれ相応の対処が必要です。

実務においては、「◯◯社が破産法を申請した。以降の連絡は代理人を通じて行うように」といった法律事務所の名前の入った郵送物が届いたようなときです。こういった明らかな事象が生じた場合には、その取引先に対する債権の50%(状況により別の数字となることもあります)を貸倒引当金として計上します。

繰り返しになりますが、貸倒引当金は「将来生じる貸倒損失に対してあらかじめ計上するもの」です。起こってもいない損失を計上できるわけですから、税務的にかなり厳格な規制が設定されています。

まとめ

取引先が倒産したとき、取引先に対して有していた売掛債権はその段階に応じて貸倒損失を計上します。ただし、計上できる時期については留意が必要です。

また、まだ発生していない貸倒損失に対応するために、貸倒引当金という制度が存在します。貸倒引当金は将来の損失に対してあらかじめ計上するものであり、実務上はかなり厳正なルールのもとで処理されます。

文:高橋昌也(税理士)

参考:

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