粉飾決算って何?

企業の不祥事はいつの時代においても絶えることがありません。そのなかでも今回はその最たる例、粉飾決算について勉強してみましょう。

粉飾決算には2種類ある

企業会計の基本目的は大きく2つあるといわれています。それは、「期間損益」と「財政状態の開示」です。

期間損益

一定の期間でどれだけ儲かったのか(あるいは損をしたのか)という情報です。期間は通常1年ですが、大企業となると半年や3カ月、時には1カ月で区切ったりします。

財政状態

ある一定の時点において、その企業がどのような持ち物を持っているのかという情報です。持ち物は、プラスのもの(現預金や売掛債権、固定資産など)とマイナスのもの(借入金や社債など)が列記されます。

期間損益と財政状態は密接に関係しています。簡単にいえば、期間損益がよい状態が続けば財政状態も良好になっていきます。投資家や金融機関、課税庁などは、これらの情報をそれぞれの目的にしたがって利用しているのです。

この会計数字をごまかすのが粉飾決算です。いろいろと手口がありますが、多くは期間損益をごまかす方法が用いられます。その目的は、大きく「黒字を減らすような粉飾」と「赤字を隠す粉飾」の2つに分けられます。

黒字を減らすような粉飾

1つ目は黒字を減らすような粉飾です。例えば「売上隠し」とか、「架空経費の計上」などが該当します。

この粉飾の目的は主に脱税です。企業にはさまざまな税金が課されますが、特に大きいのは利益(儲け)に対する課税と消費活動に対する課税です。前者は法人税や所得税、後者は消費税が当てはまりますが、これらの税金を減らすのは簡単です。売上を隠したり、実際には存在しない経費を水増したりすればいいのです。実態よりも期間損益を悪くみせることで、税金を逃れようというわけです。

当然、課税庁は税金逃れを許さないために監視を続けています。いわゆる税務調査というのは、この類の粉飾(脱税)を許さないために行われているものです。業種・業態によって異なりますが、だいたいは下記のポイントをしっかりとチェックします。

  • 小売業や飲食店業などの現金商売で、日常的な売上隠しをしていないか?
  • 存在しない取引先をでっち上げて、経費をかさ増ししていないか?

赤字を隠す粉飾

2つ目は赤字を隠すような粉飾です。先ほどとは逆に、「架空の売上計上」や「損失隠し」などが該当します。

この粉飾の目的は、投資家や金融機関などを騙すことにあります。投資家や金融機関は、常に投資先や貸付先に関する動向を注視しています。彼らは、もし投資先や貸付先の業績が悪化するようなことがあれば、投資資金の引き上げや貸付の繰上返済などを検討します。ですが、企業としてはそういった事態をなんとしても避けたいはずです。そのため、実際よりも自分たちの業績をよくみせたい、という誘惑にかられるのです。

この手の粉飾は、特に大手企業において行われています。大手企業は、膨大な数の株主や複数の金融機関など、とても多くの利害関係者を有しています。経営陣は「自分が経営しているときに業績を悪化させて、株主や金融機関からそっぽを向かれたら……」と、常に怯えています。そのため、このような粉飾に手を染めることが多くなってしまうのです。これは、たとえ経営者が代替わりをしてもあまり変わりません。そのまま粉飾が引き継がれてしまうことも、特に珍しいことではありません。

なお、稀に起こる事例として、「会計基準の大幅な変更」が理由で起こる粉飾もあります。それまでの会計基準では経費とされていなかったものが、会計基準の変更により経費として計上しなければならなくなることが、たまにあります。企業からすればいきなりルールを変えられてしまったように感じることから、とりあえずごまかすような気持ちで粉飾をはじめてしまうようです。

粉飾は割に合わない

どちらの粉飾にしても、割にあわない終わり方をすることがほとんどです。黒字隠しの粉飾(脱税)では、税務調査によりバレてしまい、結局納税をするハメになります。しかも、とんでもない罰金まで課されます。悪質な場合には、税法違反で刑事告訴されることすらありえます。できれば税金を払いたくない、という気持ちはわかりますが、脱税には手を出さないことを強くオススメします。

赤字隠しの粉飾も同様です。実際、名のある大企業が赤字隠しをした結果、社会的な信用、ブランド力、株価などなど、あらゆる企業価値を損ねたという事例が数多くあります。こうしたことは過去にもありましたし、現在も進行形で続き、そして未来においても変わらないでしょう。一時的にごまかしたとしても、最終的にはバレます。

粉飾がバレる理由として、最初に触れた期間損益と財政状態の関係が挙げられます。繰り返しになりますが、両者は密接に関係しています。粉飾は多くの場合、期間損益をいじりますが、その結果、財政状態に関して不可思議な状態が起こりやすいのです。「この業績からしたら、こういう感じの持ち物になっているはずなんだけどなぁ……」というボンヤリとした違和感から粉飾が発覚することは珍しくありません。

まとめ

企業会計は、期間損益と財政状態を開示しますが、粉飾の多くは期間損益をごまかします。また、黒字を隠す粉飾は脱税を、赤字を隠す粉飾は銀行や機関投資家などを騙す目的で行われます。

しかし、粉飾は最終的にはそのほとんどがバレるものです。結果として、粉飾した企業は金銭的・社会的な制裁を受けることになります。

文:高橋昌也(税理士)

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