年末に経費を使うと節税になる?個人事業主なら知っておきたい大切な原則とは

決算が近づいてくると気になるのが税金です。すると、年末にまとめて経費を使おうとする人も増えてきます。でも、ちょっと待ってください。年末に経費を使う際には、いくつか注意しなければならない点があります。

税金は利益に対して課される

まずは大前提として、個人事業主に対して課される所得税について確認をしてみましょう。

  • 所得(税務)=利益(会計)=儲け(日常)

所得税は、文字どおり所得に対して課されます。そして「所得」とは、会計用語でいえば「利益」のことです。より日常的な言葉に直せば、「儲け」とも言い換えることができます。なお、「所得」というのは税務用語です。

  • 利益=収益-費用

利益は、収益(売上)から費用(経費)を差し引いて計算します。当たり前のようなことですが、このあたりの言葉を適切に使いこなせている個人事業主は、意外と少ないです。売上と利益がごっちゃ混ぜになっていたりすることも珍しくありません。

「何に対して課税されているのか?」「それはどうやって計算されるのか?」など、言葉の使い方を含め、きちんと覚えておきましょう。

そして、この計算式からも分かるとおり、年末にまとめて経費を使う、言い換えると「費用を計上する」ことには利益を減らす効果があります。利益が減るということは、税金が減るということです。つまり、考え方として「年末に経費を使うと節税効果がある」というのは本当のことなのです。

費用と収益の対応が大切

ただし、なんでも利益を減らす効果が見込めるというわけではありません。ここで会計における、とても大切な原則を理解する必要があります。それは「費用収益対応の原則」と呼ばれるものです。

費用収益対応の原則とは、次のようなものです。

  • 会計の目的は、商売をしている人(個人事業主や法人)の1年間の利益を正しく計算することである

ここでのポイントは「1年間」という期間が明言されていることです。個人事業主であれば、1月から12月ということで、期間がしっかりと区切られています。

  • その1年間で計上されている収益(売上)と費用(経費)は、しっかりと紐づけられていなければいけない

商売の理屈からすれば、何かしらの費用が計上されていれば、それに対応する収益も計上されているはずです。どこかから商品を仕入れてきて、それを売った。どこかに行くための交通費を支払って、行った先でサービスを提供して代金をもらった。このような場合、費用と収益が対応していると考えられます。

改めてこんなことを指摘されると、すごく当たり前のように思えます。しかし、厳密に考えていくと、実際の商売では費用と収益が対応していない例がしばしば発生するのです。

収益に対応していない費用を使っても、節税にはならない

ポイントとなるのは1年間という区切りです。つまり「何かを買って、その代金は今年のうちに支払った。しかし、その経費に対応する売上が計上されるのは今年ではなく、来年以降になる」というものがあるということです。実務では、主に以下の2つが取り上げられます。

  • 棚卸在庫や未使用の貯蔵品

年末近くになって、決算対策ということで大量の仕入をしたとします。しかし、当然すぐに売れるわけではありませんので、年末時点ではほとんどの商品が倉庫に保管されている状態となります。つまり「商品はすでに仕入れたけれども、それに対応する売上はまだ計上されていない」ということです。これでは1年間の費用と収益が対応していないことになります。

したがって、年末時点で未販売の商品は棚卸在庫として、当期の費用からは除外されます。そのうえで、売れた時点で改めて費用として認識されることになります。これは年末近くに大量の備品や事務用品などを購入した場合でも同じです。未使用の分については、貯蔵品としてやはり費用から除外されます。

  • 高額で長期間使用できる資産を購入した場合

例えば、車両を購入したとしましょう。車というのは、通常何年にもわたって使用することができるものです。そして、それなりに高額なものでもあります。このような資産を、購入した時点で全額費用計上してしまうと、費用と収益の対応関係が大きく崩れてしまいます。高額な買い物をした年は利益が大きく減少し、特に買い物をしていない年は利益が大きくなってしまうのでは、適切な会計処理とはいえないと考えるのです。

そこで、高額で長期間使える資産を購入した場合には、固定資産としていったん計上し、そのうえでその資産の種類に応じて何年間かにわたって費用を分配します。同じような考え方は、長期間にわたる保険料を支払ったり、不動産の礼金を支払ったりした場合にも適用されます。

棚卸資産と固定資産は、税務における主要論点です。どちらも「1年間の利益を正しく計算しているか?」という意味で、とても大切なポイントだからです。これらが適切に処理をされていないと、利益が不当に少ない状態で計算されることになります。ですので、税務署はこれらの点が適切に処理されているのか、常に目を光らせています。

年末にまとめて経費を使う場合には、「すぐに使う、それほど高くないもの」を買うようにしましょう。例えば現場ですぐに必要な工具類やPC、スマホなどの備品類です。また、修理やメンテナンスなどを年末近くに済ませてしまうのも有効です。

なお、高額か否かの1つの判断基準は10万円です(実際には税務上の特例などで、もう少し上まで大丈夫なこともあります)。

まとめ

税金は利益に対して課されます。利益=収益-費用で計算されるので、年末に経費(費用)を使うと、一定の節税効果があります。ただし、年末時点での棚卸資産や高額な固定資産などについては、買ったからといってすぐ経費になるわけではありません。

すぐに経費にして、節税したいのであれば、現場ですぐに必要な工具類やPC、スマホなどの備品類を購入したり、修理やメンテナンスを実施したりしましょう。

文:高橋昌也(税理士)

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