年末調整は「確定申告の簡易版」って本当?

毎年、この時期になると「年末調整」という言葉を見かけるようになります。ところで、年末に「何」を調整しているのでしょうか?

所得税の基本は「自分で申告」

最初に覚えておきたいのは、「年末調整」という言葉は所得税の用語だということです。それでは、所得税とはどのような税金なのでしょうか?

  • 所得税とは、その人が1年間に得た所得に対して課される税金である

所得とは、日常的な言葉に言い換えれば「儲け」のことです。儲けの金額は、得られたお金(収入)から出ていったお金(支出)を引くことで計算できます。商売をしている人ならば、売上から経費を引いて計算します。サラリーマンの場合、もらった給料の金額から一定の概算経費を差し引いて計算します。

  • 所得を確定させて税額を計算する作業を「確定申告」という

各人の所得税は、確定申告という手続きにより計算されます。その人が1年間、どんな経済活動をして、どれだけの所得を得たのか、そしてその所得に対していくらの税金が課されるべきなのか、1年を終えた後、毎年2~3月ごろに確定申告という手続きを通じて税金を計算します。

この確定申告ですが、大原則として納税者本人が自分で計算をして、自分で申告をする必要があります。このような仕組みを「申告納税制度」といいます。

実は、税金のなかにはお役所が勝手に税額を決めてくるものもあります。自動車税やタバコ税、酒税などはその最たる例です。その一方で、所得税や法人税などの税金は納税者の側が自分で計算をして、税務署に申告をする必要があります。

会社が代わりにやってあげよう、という仕組み

確定申告の仕組みですが、実際に自分で申告をやろうと思うと複雑で、とても時間がかかります。もし、日本国民全員が確定申告を行うとなったら、納税者も、そして処理をする税務署もパンクしてしまうのではないかと思います。

ところで、上述したように、サラリーマンの所得計算では概算経費を使用します。これは、給与の金額さえ分かっていれば、後は概算計算で済むということです。つまり、商売をしている人や不動産経営者などに比べれば、所得の計算が大分簡単なのです。

そして、サラリーマンが得ている給与の金額は、雇い主の側であれば当然に把握をしています。そこで、納税者本人に計算させるのではなく、雇い主側に計算を代行させてしまおう、という仕組みができあがりました。これが年末調整です。

ですから、年末調整は「簡易版の確定申告」と言い換えることもできます。主な計算要素である給与収入と概算経費は、会社の側で確認をすることができます。後は社員の家族構成や支払っている健康保険、年金、保険料などの私生活に関する情報を集めれば、その社員の税額を計算することができます。

その一方、社員に支払う給与からは毎月源泉所得税というものが天引きされています。これは、その月の給与に対して、とりあえずこれくらいの税金を引いておくという仕組みです。

源泉所得税は1カ月単位で計算されているため、1年間を通じて天引きされる額は本来の年間税額とはズレが生じることになります。例えば、ある社員について、1年間で源泉徴収された税額が10万円だったとします。年末調整を行った結果、その社員の年間税額は7万円だと計算された場合、3万円だけ過剰に天引きされていたことになります。そこで、この3万円を社員に返す必要が出てきます。この3万円こそが「年末調整還付金」と呼ばれるものです。

年末調整の注意事項

本来は個々人で計算すべき所得税の計算を、会社が代行してやってくれる。また、すでに天引きされていた源泉所得税との差額調整を行う。これが年末調整の機能です。

年末調整が正しく行われるためには、上記で紹介したように、必要な情報をきちんと会社側に提出する必要があります。家族の情報や払っている各種保険料など、提出を求められている資料が不足していると、税額の計算に当たって不利益を被ることになります。

また、年末調整は「簡易的な確定申告」だと紹介しました。簡易なだけあって、年末調整では対応することができない制度もあります。有名なところでは医療費控除です。多額の医療費を負担している場合に税務上も考慮するという医療費控除ですが、この適用は年末調整ではできません。改めて、確定申告の手続をする必要があります。特に出産があったような場合には該当することが多いので、注意が必要です。

医療費控除以外にも、住宅を購入したときのローン控除も年末調整に非対応です。この規定については、適用初年度については確定申告で行う必要があります。

まとめ

年末調整とは、本来は自分自身で計算をすべき所得税について、会社側が代行して計算する簡易確定申告です。必要な資料を提出することで、会社がその人の税額を代わりに計算してくれます。ただし、あくまでも簡易確定申告であるため、医療費控除や住宅を購入したときのローン控除など一部の規定について適用を受けたい場合には、改めて確定申告をする必要があります。

文:高橋昌也(税理士)

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