健全な経営は、適切な在庫管理から!

3月が決算という法人も多いのではないでしょうか。そこで、今回は適切な在庫管理について学んでいきましょう。地味ではありますが、在庫管理は経営方針を左右するくらい大切なことです。

会計的には在庫をどう考える?

会計には「費用収益対応の原則」と呼ばれる大原則があります。「その年の売上と費用はしっかりと対応し把握すること」ということです。

ここで在庫について考えてみましょう。在庫とは「仕入れたけれどもまだ売れていない商品」のことです。言い換えると、「費用としてはすでに計上されたけれども、これに対応する売上はまだ計上されていない」ということです。前述した「費用収益対応の原則」からすると、このままでは適切な状態とはいえません。なぜなら、経費だけが計上されて、売上は計上されていないからです。つまり、企業会計においては、年度末時点で残っている在庫は経費から差し引く必要があるのです。

具体的な数字で考えてみましょう。たとえば、次のような状況だったとします。

・期首時点で在庫が100あった。
・期中において1,000の仕入をした。
・期末において200の在庫があった。

この場合、期首にあった100はその期においてすべて売れたものと考えます。したがって、

100(期首の分)+1,000(期中仕入)-200(期末在庫)=900(当期売上原価)

と計算します。

この計算からも分かるように、期末の在庫が過剰にある場合、費用がそれだけ減少することになります。費用が減るということは利益が増えるということですから、場合によっては税金が増えることを意味します。

中小企業にとって、納税資金の確保は常に頭痛の種です。過剰在庫は税金対策の意味合いでも好ましいものではありません。不良在庫を抱えているような場合には、思い切って在庫を廃棄したり、値引き販売をするなどして適宜在庫整理を行うことが、税金対策にもつながります。

在庫を経営的に判断する

在庫については、会計や税務だけでなく別の観点からも考慮が必要です。

・資金繰りで考える

在庫を抱える商売は、「お金で商品を仕入れ、その商品を販売してまたお金にする」という連続です。つまり資金繰りの考え方でいけば、在庫とは「まだお金に変えることができていない商品」ということです。

したがって、在庫が過剰に増えていくということは、それだけ資金繰りを圧迫することを意味します。在庫が少なくなるとなんとなく心配になって商品を仕入れてしまう、という社長さんは少なくありません。しかしその結果、手元のお金があまりにも少なくなっていないでしょうか?

・商売の機会を生むために

それでは、在庫が少なければ少ないほどよいのでしょうか? しかし、それでは商機を逃すことになりかねません。

昨今、商売においてはスピードがとても重要です。取引先から要求があったとき、どれくらい早急に対処ができるかによって、評価は大きく変わってきます。また、本当だったらもっとたくさん売れていたはずのものが、少ししか仕入れていなかったために販売機会を逃してしまう、なんてこともよくある話です。

多すぎてもダメ、少なすぎてもダメ。適切な在庫水準というのは、そう簡単に答えが出せるような単純な問題ではありません。

自社の経営方針と在庫を一致させる

適切な在庫管理は、経営方針と一致することにより達成されます。例えば、こんな例はどうでしょうか?

・品種を絞り込む

自社で取り扱う商品をできる限り絞り込みます。もし1品目まで絞り込んだ場合、在庫管理はその1品目だけに注意すればよいことになります。

仮に一時的に在庫量が過少、または過大になったとしても、1品目であれば、ある程度吸収することができます。大手企業が参入しないようなニッチ市場で活躍する中小企業には、このような経営方針を採用しているところが少なくありません。

・多品種少量生産で即納対応を売りにする

上の例とは逆に、できる限り多くの商品をたくさん在庫する方法もあります。当然、在庫金額は大きく膨れていくことになります。資金繰り的にはとても負担が重たいですが、そうやって在庫を揃えておくことで短納期対応が実現できれば、単価的にも有利な交渉をすることができるかもしれません。実際、大手メーカーのなかには、「多少単価が高くても、短納期で対応してくれる取引先を大切にしたい」というところもあります。

このように、適切な在庫は自社の経営方針によって大きく異なります。表面上の数字で判断するのではなく、在庫が経営上の目的と合致しているのかを常に確認をすることが大切です。

まとめ

会計上、在庫は費用の控除項目として扱われます。したがって、過剰な在庫は税負担を重くすることもあります。一方、経営的に考えた場合、在庫は多すぎると資金繰りを圧迫し、少なすぎる場合には商機を逃すことにつながります。自社の経営方針を検討し、目指す方向と在庫が合致していくようにすることが大切です。

文:高橋昌也(税理士)

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