平成29年度税制改正―法人税改正のポイント

平成29年度税制改正では、法人課税の改正として研究開発税制や所得拡大税制の見直し、コーポレートガバナンス改革・事業再編の環境整備などが行われます。法人課税の改正のポイントを専門家が説明します。

変わる研究開発税制

研究開発税制の基本的な仕組みは研究開発費の税額控除です。これは、試験研究費のうち一定の割合に相当する金額を法人税額から控除することができます。平成29年度の税制改正でのポイントは次の3つです。

  • 試験研究費の増減率に応じて控除率にメリハリがつく仕組みが導入されます。
    総額型の税額控除率は大企業の場合、6~14%(現行8~10%)、中小法人の場合は12~17%(現行12%)となります。試験研究費の増額が大きいと、減税額も大きくなります。
  • 試験研究費の定義を見直し、「第4次産業革命型」のサービス開発が支援対象に追加されます。
    「第4次産業革命型」とは、IoT、ビッグデータ、AIなどを活用することによる新たなビジネスのことです。これは、これまでのモノ作りの研究開発に加え、新しいビジネス創出を税制で後押しする改正です。
  • オープンイノベーション型の手続き要件が緩和されます。
    大学、国の研究機関、企業等との共同研究の場合、対象費用の拡大や手続きの簡素化などにより、より実態に即した運用が出来るようになります。

所得拡大促進税制の拡充

個人所得の拡大を目指すため、企業が支払った給与等のうち一定の割合を法人税額から控除する制度です。これは、大企業よりも中小企業に手厚くなっています。まず、中小企業の現行の要件からみてみましょう。

  1. 給与等支給総額が平成24年度比で、平成25年、26年度が2%以上、平成27年度から平成29年度が3%以上増加していること
  2. 給与等支給総額が前事業年度以上であること
  3. 平均給与等支給額が前事業年度を上回ること

この3つの要件を満たす場合、平成24年度からの増加額の10%の税額控除が受けられるというものです。これが、平成29年度の税制改正で、3番の平均給与等支給額が前年比2%以上増加の場合、税額控除を12%上乗せし、22%の控除を受けることが出来ます。

大企業の場合、3番の要件が前年比2%以上でないと受けられないことになりましたが、これまでの10%の控除率に2%上乗せされ、12%の控除を受けられます。支払う給与などの総額が増えて、1人当たりの給与も増えていれば、法人税の減税が受けられる、その枠が広がった、といったところでしょうか。

コーポレートガバナンス改革の方向性

  • 法人税の申告期限の特例が見直されます。

一定の要件を満たす場合、最大4カ月間の申告期限の延長が認められることになります。申告期限は事業年度終了後2カ月が原則です。改正前は最大3カ月後まででしたが、決算日から6カ月を超えない範囲内で、延長が認められることになりました。

  • 役員給与等の損金算入要件が見直されます。

利益連動給与について、算定指標の範囲に株式の市場価格の状況を示す指標および売上高の状況を示す指標などが加えられます。

  • 組織再編税制等の見直しが行われます。

特定事業を切り出して独立会社とするスピンオフの際の、譲渡損益や配当に対する課税の繰り延べができるようになります。企業の機動的な事業再編を可能とするための環境整備の一環です。

まとめ

法人課税に関する改正事項は、個人の日々の暮らしに直結するわけではありません。それでも、法人課税の仕組みは日本の経済状況、国の政策を反映している点で大変興味深いものです。法人の経営者にとっては、時勢に乗り遅れない経営戦略のための貴重な指標といえるでしょう。

平成29年度の税制改正では、競争力強化のための研究開発投資の後押し、さらに手厚い賃上げのインセンティブ、業績連動報酬の活用促進など、経済の好循環を促すための改正が盛り込まれました。あなたの会社で該当しそうなものはあるでしょうか。

文:川﨑由紀子(税理士)

参考:

  • 「平成29年度税制改正(案)のポイント」(平成29年2月発行)2 法人課税|財務省
  • 平成29年度税制改正 平成29年度税制改正について(PDF)|経済産業省

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