加熱する“ふるさと納税”、その問題点とは?

今やすっかり定着した“ふるさと納税”。ところが、現在その制度設計を巡り、さまざまな問題点が指摘されるようになってきました。今回は、その背景について確認していきましょう。

“ふるさと納税”は、そもそもは善意の寄付である

ふるさと「納税」と呼ばれているこの制度、実際には地方自治体に対する寄付です。そもそもの趣旨は以下のようなものでした。

  • 自分が応援したいと思える地方自治体に寄付をする

大きなきっかけとなったのは東日本大震災です。壊滅的な被害を受けた東北地方に対して、何らかの形で応援をしたいという全国的な運動が起こりました。また、首都圏への人口集中と地方の過疎化も踏まえ、都会から地方への資金的な支援策の拡充も求められていました。そこで、地方自治体に対する寄付制度を拡充するとともに、寄付者に対する何かしらの優遇策を設けることが検討されたのです。

  • 使いみちを指定する

通常、我々は納めた税金の使いみちまで指定することは出来ません。しかし、納税者一人ひとりにとって優先したい行政上の問題は異なります。教育なのか、福祉なのか、経済なのか。これらの課題に対して何を優先的に解決したいのか、寄付という形で明示することとしました。

このような背景から始まったのが“ふるさと納税”です。

ところで地方自治体に対する寄付金は、擬似的な納税のようなものです。そこで一定の限度を設定し、寄付額相当(正確には2,000円を引いた残額)の所得税と住民税を減税するという制度が作られました。

ところが、いろいろと問題が出てきました

このように一見すると「頑張っている地方を応援する素晴らしい制度‼」なのですが……。返礼品競争や人口集中地域における税収減、所得格差による効用の差など、いろいろと問題が出てきました。

  • 返礼品競争

さまざまな地方が、ふるさと納税における寄付金を獲得するために豪華な返礼品を用意するようになってきました。現在の大流行は、この返礼品が原因です。一般的なレベルの品物であれば問題なかったのですが、その品物や金額のエスカレートが続いています。なかには手に入れた返礼品をネットオークションで転売するような悪質な事例も出ています。さらには、返礼品を用意するために、地方自治体の負担が増えてきているという本末転倒な結果も出てきました。一部からは「返礼品に一定の制限を」「もう返礼品競争には付き合っていられない」といった声も聴こえています。

  • 人口集中地域における税収減

もともとの制度設計が「都会から地方への支援」であるため、当然の結果ではあるのですが……、その影響額が想定よりも大きくなり過ぎているという話です。当然のことですが、人がたくさんいるところには、それだけたくさんの税金が必要です。特に東京を中心とした首都圏では、その減収幅が非常に大きく、その金額は「学校1つの建設を諦めなければならないレベル」のこともあるのだとか。今後ますます進むであろう人口集中に対して、現在の制度は大きな問題を引き起こしかねません。

  • 結局お金持ちだけが得をする?

ふるさと納税の仕組みを理解するとよく分かるのですが、この制度で大きな得が出来るのは高額所得者です。年収が300万円くらいの人と、年収が1,000万円を超える人とでは受けられる恩恵の金額がまったく異なります。つまり、結局は「お金持ちの優遇策なのではないか?」という懸念が出てきます。また、返礼品の金額が多額な場合には所得税や住民税の課税問題が出てくるのですが、制度設計上、正確な課税は不可能です。実際、相当額のふるさと納税をしている高額所得者に対しては、一定額以上の課税漏れが起こっていることが予想されます。

これらの問題点については、各地方自治体による対応もそうですが、国レベルでの対処が必要不可欠です。

総務相が見直しの発言も

すでに平成29年2月には、総務相が返礼品の改善策検討を発表しています。とはいえ、返礼品は自治体の自主的な努力によって決められていることから、法律的な制限は難しいとも指摘されています。ふるさと納税はまだ歴史が浅い制度でもあることから、今後どのような改変が加えられ、どんな仕組みになるのか注目していきたいところです。

まとめ

地方自治体への支援策として広まってきたふるさと納税。過剰な返礼品競争、人口集中地域における税収減、所得格差による効用の差など、利用者の拡大に伴って問題点も表面化してきました。現在、国レベルでのガイドライン策定も検討されはじめ、制度全体の方向性が注目されます。

文:高橋昌也(税理士)

 

参考:

  • ふるさと納税の「返礼品」問題、近く改善に着手と高市早苗総務相(2017/2/17)|産経ニュース
  • 高額すぎる返礼品など掲載やめる ふるさと納税で仲介サイトが基準見直し(2017/3/1)|サンケイビズ
  • 勝浦市、商品券廃止 ふるさと納税返礼品 換金問題改善できず(2017/2/23)|千葉日報
  • 億単位の減収 多摩地域からも悲鳴 武蔵野・三鷹・調布など、制度見直し訴え 返礼品導入検討も /東京(2017/3/8)|毎日新聞

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