退職金の上乗せでの早期退職と定年退職、どちらの税金が安くなる?

退職金に2,000万円の上乗せで支給される早期退職の募集があります。現在56歳で、年収は900万円です。定年まで勤めた場合と早期退職し退職金を上乗せでもらうのと、税金が安くなるのはどちらでしょうか? 退職金は、定年まで勤めた場合2,200万円くらいになる予定です。

早期退職制度と退職金

早期退職制度とは言葉のとおり、定年より早い時期に退職することを促す制度で、退職金の上乗せ、転職支援などの優遇措置が受けられるのが一般的です。終身雇用制のもと、社員は定年まで勤めるケースが多い日本企業ですが、年齢別構成の適正化、経営悪化による人件費削減などの理由から退職希望者を募集することがあります。これは、相対的に給与水準の高い50代の社員が対象となる場合が多いようです。

早期退職の最大のインセンティブは割増し退職金でしょう。定年退職の場合よりかなり高額を受け取れるようです。年齢による加算、支給率の加算など、会社によって算定基準はさまざまです。今すぐ退職を検討しなくても、自社の仕組みは確認しておくとよいでしょう。

定年まで働いた場合と早期退職した場合、どちらの退職金のほうが税金を抑えられる?

早期退職でも、定年退職でも「退職金」であれば、退職所得として扱われます。そして、退職所得はほかの所得よりかなり税負担が軽減される制度になっています。具体的には、勤続年数に応じた退職所得控除を差し引き、その2分の1が課税の対象となります。そして、給与、不動産などのほかの所得と区分して計算します。ただし所得税は超過累進税率ですから、いかに優遇されているとはいえ、金額が大きくなれば税率も高くなります。

例えば、勤続34年で割増退職金2,000万円を上乗せした4,200万円を一時金で受け取ったとします。退職所得控除は、勤続20年以下は年40万円、20年超は年70万円です(計算式は、20年までは800万円でまとめています)。まず、税金がかかる金額を計算します。

4,200万円-{800万円+70万円×(34年-20年)}×1/2=1,210万円

この金額で、所得税・復興税・住民税を計算すると、約372万円の税負担となります。もちろん早期退職したのち、再就職や起業などで収入があれば、それに見合った税金は発生します。

一方、勤続38年で退職金2,200万円を一時金で受け取ったとします。

2,200万円-{800万円+70万円×(38年-20年)}×1/2=70万円

この場合の税負担は約11万円です。退職金の税金はかなり違いますね。

多少強引ですが、比べるために給与に関する税金も、年収900万円であと4年働いたとして概算してみましょう。社会保険料控除、扶養控除などの所得控除が200万円であったとします。この場合の所得税・復興税・住民税を計算すると、1年で約105万円の税負担です。これが4年間続けば420万円です。

 

どれくらいの差に感じられるでしょうか? もちろん、定年まで給与の額に変更があるかもしれませんし、前提となる制度がこのまま維持されるとは限りません。また、退職金は一時金で受け取るだけでなく、分割して年金方式で受け取る、またはこの併用など、方法がいくつかあります。

そして、一時金で受け取れば「退職所得」、年金方式で受け取ると「雑所得」となり、課税方法も変わりますし、税額も変わります。社会保険料の負担を併せて考えると、トータルでどちらが安くつくかは、実は簡単に答えが出る問題ではないのです。

まとめ

早期退職制度と聞いて、心穏やかでない人も少なくないでしょう。収入の問題もさることながら、会社に所属しているゆえに享受できる有形無形のメリットも手放しがたいものです。一方、まとまった資金を早期に手に入れることは、いつかやりたかったことを実現する最後のチャンスともいえます。収益を生む事業を起こすことができれば、貯蓄を取り崩す老後ではなく、安定収入のある老後が手に入るかもしれません。

それでも、退職金とは無縁の人たちも多いのですから、早期退職制度は恵まれた制度ともいえます。長年の会社員の功労である退職金については手厚い税制となっているのですから、どのタイミングが自分にとって最もよい選択なのか、次のライフステージを見据えてよく検討したいものです。

文:川﨑由紀子(税理士)

参考:

  • No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁
  • 退職金と税|国税庁

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