もしものときの税知識……災害対策に対する税制改正

地震や津波、ゲリラ豪雨、大規模な山火事など自然災害に関する話題が増えてきました。平成29年度税制改正でも、災害対策に対して新たな制度が用意されました。そこで、ここでは災害と税制に関する制度について確認してみましょう。

申告期限の延長や税の減免措置

災害に関連して、以下のような制度が用意されています。

  • 申告期限の延長、納税猶予

税務において期限はとても厳格に定められています。しかし、災害や盗難などやむを得ない事情により期限内の申告が難しい場合には、申告期限の延長が認められることがあります。近年で一番分かりやすい例でいえば東日本大震災です。3月15日という申告期限間際の3月11日に地震が発生したため、期限内の申告が不可能となった地域では申告期限が延長されました。地域での指定とは別に、個別指定により納税期限が延長されることもあります。

また、通常は申告期限と納税期限は同日に指定されていますが、災害を受けたときには納税に関しても猶予されることがあります。

申告期限の延長や納税猶予は確定申告に限定されず、期中において行われる予定申告や予定納税についても一定の規定が設けられています。

  • 税の減免措置

災害による損失を考慮して、税額を減免する措置も用意されています。災害減免法により所得税が減額されるほか、雑損控除という所得税法上の規定により税金が安くなります。

  • 各種資料に関する特例

本来であれば適用を受けるために保存が義務付けられている書類が災害により滅失したり、適用を受けるために必要な書類の提出が災害により期限までに提出できなかったりした場合など、資料の保管や提出についても一定の特例が用意されています。

このように、災害については申告、納税、事務作業、そして税そのものの軽減も併せて、さまざまな側面から支援制度が用意されています。

税制改正で災害対応税制を整備

ただし、これら税制上の災害対応はすべての災害において全規定が適用されるわけではありません。特に影響の大きい規定については、災害ごとに特別法を整備して対応していました。

例えば、住宅ローン控除の取り扱いです。住宅ローン控除は、年末時点において住宅ローンを有し、かつその住宅に住み続けていることが適用を受けるための条件となっています。しかし東日本大震災では、地震と津波により住宅が倒壊・消失し、住み続けることができなくなってしまったため、住宅ローン控除の適用条件を満たさない人が続出しました。そこで特別法により、「東日本大震災で住宅に住み続けられなくなった人については、特別に控除を受け続けることができるようにします」と定めることにより、控除を受け続けることができるようになりました。

しかし、災害が起こってから改めて特例法を整備するという方法では、「今回の災害は特例法が整備されるのか?」「税務的にどのような扱いとなるのか?」などがはっきりするまでに時間がかかり、復興計画を進めるうえで障害となります。

そこで、平成29年度の税制改正において、これら災害対応の税制が常設化されることとなりました。上記で紹介した住宅ローン控除や財形住宅・年金貯蓄の非課税制度措置、災害損失による法人税の繰戻還付などの規定について、制度を常設化することにより災害からの復興を税制として支援することとなったのです。

事務作業の円滑化に期待か

災害からの復興においては、身心に関する余計な負担を避けるためにも、できる限り効率的に作業を進める必要があります。その意味で、税務や経理といった分野は最も効率化が求められる分野だといえます。

自分が災害による支援の対象になるのかならないのか、それが分からないまま物事を進めることは被災者にとって大きな負担となります。そのような負担を避け迅速に復興を進めるためにも、今回の災害対応税制の常設化は「災害に強い国家づくり」の運用面における大きな一歩として期待されています。

まとめ

災害時には、申告や納税期限の延長、税の軽減、各種資料整理の猶予など、さまざまな支援制度が受けられます。しかし、これまでは災害ごとに特別法を整備する形であったことから、被災者は自分が支援制度の対象となるのかはっきりしないことが多々ありました。平成29年度の税制改正で災害対応税制が常設化されたことで、事務作業の円滑化が進むとともに、復興作業の迅速化が期待されます。

文:高橋昌也(税理士)

参考:

  • 災害を受けたら|国税庁
  • 東日本大震災関連の国税庁からのお知らせ|国税庁
  • 平成28年熊本地震に関するお知らせ|国税庁
  • No.3302 マイホームを売ったときの特例
  • 「平成29年度税制改正(案)のポイント」(平成29年2月発行)|財務省

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