社長所有の不動産を時価よりも高く売却すると、税金はどうなる?

一生のうちで最も高い買い物といわれる不動産。その売却には大きな金額が動きますが、金額の設定についてはいろいろと気をつけなければならないことがあります。今回は、個人所有の土地を、経営している会社に売却するという想定で、いくつかのパターンを考えてみましょう。

不動産の売却、基本は譲渡所得として課税

時価が3,000万円の個人所有の土地を、経営している法人に時価で売却したとします。なお、その土地は10年前に2,500万円で購入したものです。

  • 一般的な土地建物の譲渡と同じように取り扱う

売却先が経営する企業であるとしても、基本的には通常の譲渡と同様の取り扱いをします。土地建物の譲渡については、自動車や美術品などの動産譲渡や給与、事業、不動産貸付といった一般的な所得とは別個のものとして、分離課税という形式により課税されます。

  • 所有していた期間に応じて税率は固定

土地建物の譲渡に関しては、譲渡年の1月1日においてその不動産の所有期間が5年を超えるか、5年以下かによって税率が決まります。今回の場合、5年を超えて所有しているので、税率は20%(所得税15%、住民税5%)です。なお、所有期間が5年以下の場合には、税率が39%(所得税30%、住民税9%)となります。また、所得税については復興特別所得税が別にかかります。

今回の取引であれば、(3,000万円-2,500万円)×20%=100万円が課税されることになります(譲渡費用は考慮せず、また各種特例も適用がない場合)。大原則としては、取引相手が誰であろうとも、課税については同じように取り扱われることとなっています。

売却価額が時価から大きく乖離している場合

しかし、仮に売却価額が一般的な時価から大きく乖離していると、課税について別の取り扱いが出てきます。これは、関係者を巻き込んで異様に安い価格、あるいは高い価格で売買をすることで不公正な経済的利益の移転を防止するためです。

  • 売却価額が異様に安い場合

一般的な時価と比べて、売却価額が異様に安く設定されている(通例的には時価の2分の1を下回るような価額で売却する場合)と、売買の両者に対してペナルティが課されます。例えば、上記の土地を1,000万円で売却したとします。このとき、売却した個人に対しては売却価額を1,000万円ではなく、時価の3,000万円で売却したものとして課税がされます。そして購入した法人ですが、3,000万円する土地を1,000万円で譲り受けたわけですから、差額の2,000万円について贈与を受けたものとして取り扱われます(受贈益が発生)。

  • 売却価額が異様に高い場合

上とは逆に、個人に対して経済的利益を移転する目的で非常に高い金額で売買をした場合はどうでしょう。例えば、上記の土地を1億円で売却したものとします。購入した法人側ですが、時価3,000万円の土地について1億円もの金額を支払ったのですから、差額の7,000万円については「役員に対して賞与を支払ったようなもの」として取り扱われる可能性があります。

法人税の計算上、役員に対する報酬や賞与は税務上の損金として取り扱うための厳密な規定が設けられています。不当に高い金額での売却は損金計上の要件を満たしていないため、会計上は経費として処理がされますが、税金の計算上は損金として認められません。つまり会社側は「3,000万円の土地を買った」のと「7,000万円の役員賞与(税金計算上、損金にできない)を支払った」というように取り扱われてしまう可能性があります。

この取引は、将来、この土地を売却するときにも大きく影響します。それは、取得価額が1億円なのか、3,000万円なのかによって税額が大きく異なるからです。そして、法人側の経理がどのように取り扱われるかによって、個人側での課税関係も影響を受けることになります(1億円の譲渡なのか、3,000万円の譲渡と7,000万円の役員賞与なのか)。

もちろん、実際に取引価額が確定するには近隣の一般的な時価だけが参照されるのではなく、その取引における独自の事情も考慮されるため、すべてが上で紹介したような取り扱いを受けるわけではありません。しかし、売買について関係者や親類縁者同士で行われる場合には、非常に厳しいチェックが入っているのも事実です。そういった取引がある場合には、売買価額について慎重に検討する必要があります。

まとめ

関係者同士の不動産売買においても、原則的には通常と同様の処理を行います。譲渡所得税は、売却価額と購入価額、それに物件の所有期間に応じて分離課税により計算されます。ただし、一般的な時価と比べて著しく低い価額や高い価額で売買が行われると、売った側、買った側双方について罰則的な取り扱いがされることがあります。

文:高橋昌也(税理士)

関連記事