同族企業で、夫婦同額の役員報酬は節税になるか?

夫が代表取締役、妻が役員なのですが、役員報酬を同額にすると節税になると聞きました。同額にした場合の節税効果と注意点を教えてください。

夫婦別々に役員報酬を支払えば、所得税を下げられる?

夫が社長の会社に妻も役員として名を連ねる、その逆もありますね。名前だけの役員である場合もあれば、夫婦同等に経営に参画している場合もあるでしょう。

中小同族会社の場合、株主=役員である場合がほとんどです。つまり、株主である役員が、役員報酬を自分たちで決めることになります。会社の財務状態、業績見込みなどを総合的に勘案し、決定していくのが建前ではありますが、やはり節税も気になります。

単純に夫婦の所得分散という視点から所得税を概算してみましょう。

夫婦で合わせて年間1,000万円の収入を得るとします。社会保険料は収入の15%、扶養親族なしと仮定します。夫が年収800万円、妻が年収200万円の場合、所得税は合計で約49万円です。夫が年収700万円、妻が年収300万円の場合ですと、所得税は合計で約36万円です。そして夫婦ともに年収500万円の場合は、所得税は合計で約27万円となります(このほかにも、住民税の負担が発生します)。

所得税は超過累進税率方式ですので、所得が高くなるほど税率も上がります。そのため、夫婦同額に近くなる(各自の年収が低くなる)ほど、税負担が少なくなるのです。

また、役員報酬は給与所得なので、給与所得控除が差し引かれます。夫が年収1,000万円で妻が0円ですと給与所得控除は1人しか使えません。つまり、2人分の枠をフルに使ったほうが有利なのです。

役員報酬を同額にするための要件

しかし、これはあくまで試算上の話です。自分たちで決める役員報酬といっても、その金額が実態に見合っていなければ、それは架空の人件費であり、脱税です。ありがちなのは、ほとんどその会社で働いていないのに、節税対策のために妻に役員報酬を支払っている場合などです。

一方、確かに夫と妻が同じように働いているのだとしたら、同額であっても適正といえます。ただし、一般的に役職に応じて報酬は変わります。例えば、代表取締役社長と専務取締役とでは職責に差があると思われます。それでも総合的に考慮し、会社の経営上、適切と判断した金額が結果として同額であれば、それを否定するものではありません。

なお、税務的な観点からいえば、役員報酬の金額が問題になるのは不相当に高額な場合です。ですから、職務内容や会社の収益状況、従業員の給与の支給状況、同業種・同規模の会社の役員報酬の支給状況などからみて適正であれば、夫婦で同額であっても差し支えありません。

同族会社の場合、家族会議でお手盛りの金額を適当に決めたのではと言われないよう、合理的に説明のつく判断基準に基づき金額を設定しておくべきでしょう。

まとめ

法人税法では役員報酬に関してルールがあり、一定のものでないと損金(経費)となりません。損金にならないと税金がかかります。一般的によく知られているルールは「定期同額給与」です。「定期同額給与」とは、決算後の株主総会で次の年度の役員報酬額を決定し、1年間毎月同じ金額を払うことです。これは、役員報酬を任意のタイミングで設定することによる利益操作を防ぐためです。

そして、過大な役員給与も損金算入されません。適正であるかどうかは、職務内容などに照らした実質基準と、定款の規定、株主総会などで決められた支給限度額を超えていないなどの形式基準により判定します。

役員報酬額をいくらにするかは、経営上の重要な判断です。この経営判断には節税対策も含まれますから、実質的、形式的に無理のない役員報酬を検討したいものです。

文:川﨑由紀子(税理士)

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